南米でいまだ現役 傑作攻撃機A-4「スカイホーク」初飛行-1954.6.22 使っている国は“やむを得ず”?

後継が決まらず退役不可なアルゼンチン空軍

 このようにブラジル海軍は、半ば意地になって使っていると言える状況ですが、それよりも問題が深刻なのが、アルゼンチンです。同空軍のA-4はブラジル海軍のものと同じく、本来の地上攻撃任務以外に、領空防衛の任務でも使用しています。そして2023年現在、同空軍が運用している要撃機としては唯一のジェット機でもあります。

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現在空軍内で唯一マトモな軍用ジェット機であるA-4AR「ファイティングホーク」(画像:アルゼンチン空軍)。

 1982(昭和57)年3月から6月までイギリスとの間で行われたフォークランド紛争時は、南米でもトップクラスの空軍力を有し、A-4に関してもイギリスの駆逐艦「コヴェントリー」を撃沈するなどの戦果を挙げています。

 しかし、戦後はイギリスの制裁により、イギリス製の兵器や兵器に使う部品に禁輸措置が取られました。これにより、イギリス由来の技術が使われているジェット戦闘機の購入が不可能になっただけでなく、修理に必要な部品の入手も困難になります。

 加えて国自体の財政難もあり、アルゼンチンでは2015(平成27)年に空軍の「ミラージュIII」戦闘機が退役、海軍の「シュペルエタンダール」攻撃機も2010年代に運用を停止しています。こうして2023年現在、アルゼンチンに超音速飛行が可能な軍用機はゼロ、ジェット機に関しても戦力になるのは、A-4と攻撃機としても運用可能なジェット練習機FMA IA 63「パンパ」のみという状況に陥っています。

 現在、アルゼンチンの防空を担っているA-4は、アメリカで1994(平成6年)に近代改修を施されたもので、同機はA-4AR「ファイティングホーク」と呼ばれています。F-16「ファイティング・ファルコン」が搭載する近代的な電子機器に換装されたため、「ファイティング・ファルコンみたいなホーク」という意味でこの愛称になったようです。

 何度も後継機の噂は出ていますが、その度にイギリスの横槍や予算不足によって断念する状況が続いています。パーツの不足や老朽化などでA-4AR「ファイティングホーク」の稼働率は落ちていますが、それでもアルゼンチンには同機を使うという選択肢しかなく、2016年辺りからオーバーホールのための予算を割いています。しかし、これも経済的事情や新型コロナウイルス影響などにより、滞り気味だとか。2023年現在、稼働する機体は10機に満たないと見られている模様です。

【了】

【スモーク引いたアクロバット機も】世界各国のA-4「スカイホーク」(写真)

Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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