通勤は戦争!?「運行情報」「時差通勤」を生んだのは戦時中の”極限状況” 今と変わらぬシステムとは

電車が動いているのか、何分遅れているのかといった「運行情報」は今では欠かせませんが、実は歴史をさかのぼると戦時中に至ります。また「時差通勤」の取り組みも戦時中に生まれたものでした。

空襲があっても出勤! 通勤の足確保のための「情報伝達」

26日付の朝日新聞ではまず「事故や空襲で交通機関がぴたりと止まる。何時復旧するか、どう乗って行けばいいかお客は何もわからない。汽車や電車が遅れる、いたずらに焦るばかりでなぜか駅員も知らない」と、戦時下の鉄道利用者の心境を表現します。空襲という時代背景を除けば今の利用者にもそのまま当てはまります。

そこで現場の状況を管理部門に上げ、情報を取りまとめて各駅に一斉連絡するとともに他社と共有。駅では次のように迅速、正確、丁寧に情報提供し、旅客誘導するというのです。

・改札口や乗降場に情報を掲示し、音声で反復して伝える

・駅間停車の列車には伝令を送り、乗務員を通じて乗客に告知する

・新聞、ラジオを通じて情報提供を徹底する

 当時の技術、設備では無線通信やデジタルを利用した案内はできないまでも、やろうとしていることは今にも通じます。その上で提供する情報は次のように記されています。

・列車の運転見合わせ、遅延の時分と運転再開見込み

・不通箇所の乗り換え、迂回経路について

・運転時刻や行先、折返し運転の区間、経路変更について

 これも現在の輸送障害で必要とされる情報と同じです。もちろん空襲被害という特殊性は別としても、鉄道利用と障害の発生、そのリカバリーという観点では、いつの時代も求められるものが変わらないのは当たり前かもしれません。それでも戦時中という極限の状況で初めて、こうした情報提供の重要性が強調されたというのは興味深い話です。

 もうひとつ注目すべきは輸送障害時に「通勤の混雑を調整するために工場や会社に情報提供し、時差退勤を促す」という項目です。つまり運転を見合わせている駅に人々が殺到すると混乱をきたすので、運転再開まで帰宅を待たせるよう協力を求めるということです。これも近年、台風接近や大雪の際に早期の退勤を促しているのに似た状況と言えます。

 もっともこれらは運輸省が定めた基準であり、実際に実行できていたか定かではないことに注意が必要です。戦争末期の人員配置、設備荒廃の状況をふまえれば困難だったでしょう。

 実際、1956(昭和31)年5月に発行された『国鉄線』は、東京鉄道管理局旅客課職員の「接客に従事する我々国鉄職員として、いつも痛感することは、事故発生に伴う旅客情報の伝達が旧態依然として余りにも遅い」という投書を掲載しています。

 ラジオが運転見合わせの発生と折返し運転の実施を伝えているのに、大半の駅ではその情報を把握しておらず、相変わらず乗車券の発売や改札を行っているというエピソードを挙げ、旅客課指令係から駅に情報が届くまでに最短30分、遅いと100分もかかる実情を明かしています。

 投稿者は運転指令への情報伝達専用電話の設置やファックスの活用など、先進的な提案をしていますが、その実現まではかなりの時間を要することになりました。

【画像】ヤバイ…! これが「終戦直後の通勤風景」です

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