「海に通勤する船」すら足りない 拡大する「洋上風力発電」に造船は応えられるか 後れをとる海洋国日本

日本でも徐々に建設が進む洋上風力発電所。これに造船業界が注目しています。建設から維持管理まで、様々なシーンを支える様々な船が必要。今は海外製の船を使うのが基本ですが、国産化が進むのでしょうか。

あんな船もこんな船も必要な「洋上風力発電」

 アフターコロナの経済活動再開にともなう世界的な外航海運市況の好調を受けて、停滞していた国内の造船業にも追い風が吹いています。外航だけでなく、国内で運航される内航の分野で、造船の新たなマーケットとして注目されているもの――そのひとつが「洋上風力発電」です。発電所の建設や維持管理に、多種多様な船が必要と見込まれています。

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洋上風力発電所の建設資材を運ぶNYKバルク・プロジェクトの重量物船「KATORI」(日本郵船の動画より)。

 洋上風力発電は2050年カーボンニュートラル実現に向け、「今後、拡大が期待されているエネルギー源」(資源エネルギー庁)とされています。国のグリーン成長戦略では2040年までに洋上風発の発電量を30~45GWまで拡大する目標も掲げています。一方で、その建設や維持管理に使われる特殊な船舶の設計・建造で、日本は欧州勢に後れを取っており、国内で新造や修繕を行える体制の確立が急務となっています。

 必要になる船の種類は実に様々です。海底地盤調査に使用するCPT調査船をはじめ、洋上風車のナセルや基礎部、ブレードなどを運ぶ重量物船、発電設備の建設を行うSEP船(自己昇降式作業台船)、電力ケーブルや情報通信ケーブルを敷設するCLV(ケーブル敷設船)、建設後の保守作業を支援するSOV(洋上風発作業母船)、そして建設や保守作業に従事する人員や物資を運ぶCTV(作業員輸送船)などがあります。

 日本では洋上風発の建設需要の高まりを受けて、清水建設が最大揚重能力(吊り上げ能力)で2500トンを誇る世界最大級の自航式SEP船「BLUE WIND」(2万8000総トン)をジャパンマリンユナイテッド(JMU)で建造し、2023年から稼働を開始しました。

 川崎汽船グループのケイライン・ウインド・サービス(KWS)も、2016年にJMUで竣工したアンカーハンドリング・タグ・サプライ船(AHTS)「あかつき」と、2021年にアイ・エス・ビーで竣工したオフショア支援船「かいゆう」を中心に洋上風発関連の支援船事業を行っています。CTVの分野では、いち早く洋上風発に目を付けていた東京汽船が2015年に国産初のCTV「PORTCAT ONE」(19総トン)をツネイシクラフト&ファシリティーズで建造しました。

 ただ、いずれの船種も国内造船所での建造実績は少なく、中小造船所での建造に最適な中型サイズのSOV(長さ84m程度)やCLV、大型CTV(長さ35m程度)は国産化が進んでいません。重量物船は日本で建造できるものの、例えばNYKバルク・プロジェクトの新型重量物船「KATORI」「KIFUNE」(1万2470重量トン)は中国の招商局南京金陵船舶で建造されています。

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