拡がるLNG船「インフラ追い付かない問題」 西日本初の“動くLNGスタンド”ようやく登場へ

環境に配慮した新たな船舶燃料としてLNGが普及する一方で、供給の課題が浮き彫りになっています。そのカギとなるのが、船から船へ燃料を補給するLNGバンカリング船です。西日本初のLNGバンカリング船が、ようやく進水しました。

非効率な供給を続けざるを得ないLNG燃料「さんふらわあ」

 このようにLNGバンカリングの需要は高まっている一方ですが、課題も多くあります。瀬戸内海側の水島や福山でバンカリングを行う場合、戸畑LNG基地から関門海峡や来島海峡を通って、往復で2日から3日ほどかかるため、「1週間に1回程度しかバンカリングすることができない」(吉上CEO)とのこと。

 加えて九州・瀬戸内エリアでのLNG補給の年間需要は、2030年に年間約9万から19万トン、2050年に約9万トンから25万トンと推計されており、年間6万トン前後しか供給できない「KEYS Azalea」1隻だけでは足りません。需要が詰み上がってくれば、KEYS が2隻目のバンカリング船を建造する可能性もありますが、現状では“様子見”の状態。そもそも新燃料の動向が不透明な中、いくら環境負荷が低いとはいえ船価が高いLNG燃料船を発注に踏み切れない船社も多いです。

 そのため、外航自動車船などでは荷主の希求もあってLNG燃料船の導入が進んでいるものの、内航船に関しては、「さんふらわあ くれない/むらさき」と同じ商船三井グループに属する商船三井フェリーの大洗~苫小牧航路に投入される新造船以外、あとに続く動きがありません。

 周りにLNG燃料船がないこともあり、別府港に発着する「さんふらわあ くれない/むらさき」はシップ・ツー・シップ方式ではなく、タンクローリー複数台で燃料を供給するトラック・ツー・シップという非効率な方式をとっています。大洗港と苫小牧港も、周囲に発着するLNG燃料船が建造されなければ、新造LNG燃料フェリー2隻のみにしか供給先がないため、トラック・ツー・シップ方式で毎日燃料を入れることになります。

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タンクローリーからLNG燃料を供給する「さんふらわあ くれない」(深水千翔撮影)。

 現在、「KEYS Azalea」の補給拠点は北九州の戸畑LNG基地だけですが、瀬戸内海に面している大分LNG基地の活用も考えられます。吉上CEOも「理想は大分・戸畑の2隻体制。別府湾でのバンカリングもあり得る」と話していました。大分でのバンカリングが可能になれば、「さんふらわあ くれない/むらさき」をシップ・ツー・シップ方式へ変更できるかもしれません。

 新燃料の普及に必要なインフラ整備が今まさに、急ピッチで進められています。

【了】

【あ、全然スマート…】“船から船へ”LNG燃料を供給する様子(写真)

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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