拡がるLNG船「インフラ追い付かない問題」 西日本初の“動くLNGスタンド”ようやく登場へ
大型船で続々採用が進むLNG燃料
LNGは従来燃料である重油に比べて硫黄酸化物(SOx)で約100%、窒素酸化物(NOx)で約80%、二酸化炭素(CO2)で約30%の排出削減が見込まれている環境に優しい燃料です。大手船社や荷主などが2050年までのカーボンニュートラル達成を目標として掲げる中、水素やアンモニアといった本格的な非化石燃料を導入するまでのブリッジソリューションとして期待されています。
外航海運では自動車船をはじめ、原油タンカーやコンテナ船、バルカーなどにもLNG焚きエンジンの採用が進んでおり、内航海運でもフェリーさんふらわあがLNG燃料フェリー「さんふらわあ くれない/むらさき」を定期航路に就航させています。
国土交通省はこうした船舶に燃料を供給できる拠点とバンカリング船の整備を推進することで、LNG燃料船の寄港を促進して国際競争力の強化を図りつつ、海運の脱炭素化に向けて船舶の燃料転換を促すことを目指しています。2023年7月現在、「伊勢湾・三河湾」「東京湾」「九州・瀬戸内」「大阪湾・瀬戸内」の4つが拠点形成事業として採択済み。このうち「伊勢湾・三河湾」では2020年10月から日本初のLNGバンカリング船「かぐや」による燃料供給が実施されています。
「KEYS Azalea」は、「九州・瀬戸内」が対象で、西は熊本県、東は岡山県にかけての広いエリアを対象としたLNG燃料バンカリング事業を日本で初めて行うことになります。
「日本郵船、商船三井、川崎汽船は、LNG燃料化を推進しており、特に自動車船が今後LNG燃料化していくと聞いている。九州近郊にはトヨタや日産、マツダ、ダイハツといった自動車メーカーの大きな工場あり、LNG燃料自動車船が北九州近郊に寄港した際にこのバンカリング船が燃料供給を行う」(吉上CEO)
たとえば日本郵船は2028年までに自動車船20隻をLNG燃料船に切り替える計画を進めています。2020年10月に就航した「SAKURA LEADER」をはじめ、すでに4隻が導入されています。
さらに九州電力はLNG燃料を使用する大型石炭専用船2隻の長期用船契約を日本郵船や商船三井と結んでおり、2023年度から松浦発電所(長崎県松浦市)や苓北発電所(熊本県天草郡)といった同社の火力発電所向け石炭輸送に投入する予定。瀬戸内海に面した岡山県倉敷市や広島県福山市に製鉄所を置くJFEスチールも、LNG焚きエンジンを搭載した21万重量トン型の鉄鋼原料輸送船3隻を24年から順次導入していくことを明らかにしています。
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