「F-16をウクライナへ」の拭えない懸念 誤操作で一発アウトのリスク ロシア機とは根本から違う!

今後数年で最大1000機の余剰F-16が出るかも

 現在、NATO(北大西洋条約機構)諸国では最新鋭のF-35戦闘機の配備が進んでおり、F-16については今後数年で数百機から約1000機もの余剰が出ると見込まれているので、ウクライナが機体を揃えることはおそらく容易です。しかし、そのF-16を操縦するパイロットはどこにいるのでしょうか。

 飛行機の操縦は、軍隊のあらゆる職務のうち最も難易度が高く、長期間の勉強と訓練が必要です。戦時になってパイロットが足りずに困るのは第1次と第2次の両世界大戦のときから変わっていない、おなじみのパターンです。

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F-35配備にともない、F-16ブロック50/52と呼ばれるタイプないし同等機は、実は年間100機近くが退役している(画像:アメリカ空軍)。

 ウクライナ空軍は、戦闘機に関してMiG-29やSu-27といったロシア製戦闘機を配備しているため、パイロットたちはアメリカ型の戦闘機へ機種転換訓練を受ける必要性があります。とはいえ、ロシア式とアメリカ式では、とくに戦闘機については設計思想が全く異なるため、決して容易ではありません。

 たとえば速度や高度、距離の表記はロシア機の場合、メートルやキロメートルといった我々日本人でもわかりやすい単位を使うのに対して、アメリカ製のF-16では「フィート(約0.3m)」「ノット(約1.85km/h)」を使用します。こうした問題は様々な箇所で発生します。

 おそらくパイロットにとって最も恐ろしい違いは「姿勢指示器」ではないでしょうか。姿勢指示器はその名の通り機体の姿勢を表示する計器であり、ロシア機もアメリカ機もヘッドアップディスプレイなどに投影されますが、F-16はロシア機とは完全に逆転して表示されるのです。

 ほかにも一例をあげると、機体が左に傾いているとき、ロシア機における表示は左に傾きますが、アメリカ製のF-16は逆に傾きます。これはロシア機が地球を基準とし「機体の姿勢」を表示するのに対し、アメリカ機は自身を基準とし「水平線の見え方」を表示するという、考え方の違いにあることが原因です。

【ロシア空軍と微妙に違う?】ウクライナ空軍の旧ソ連系戦闘機たち(写真)

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