ナゾ求人「F-16戦闘機の経験者/勤務地ルーマニア」民間企業がなぜ? まもなく実現「国際F-16学校」構想とは

ルーマニアに作られるF-16飛行学校 ウクライナ人も受け入れる?

 ドラケン・インターナショナルが出した求人の詳細を見ていくと、その勤務地は会社のあるアメリカではなく、なんと中欧のルーマニアとなっています。より具体的には同国南部のカラシシ県にあるルーマニア空軍第86空軍基地のF-16訓練センターとあります。

 このルーマニア空軍第86空軍基地は、1950年代の東西冷戦期には旧ソ連製の戦闘機を運用拠点となっていましたが、2000年代以降はNATO(北大西洋条約機構)諸国との連携を強めていき、現在はアメリカ製戦闘機のF-16が同基地に配備されています。

 ルーマニア空軍のF-16の配備計画は現在進行中の状態で、2021年までにポルトガル空軍が運用していた17機のF-16が引き渡され、2023年からは追加でノルウェーから購入した32機のF-16の納入も始まります。機体の配備と平行して、それを操縦するパイロットの訓練と育成も急務であり、ドラケン・インターナショナルの求人に記載されている訓練センターはそのために設立される形です。

 ただ、この訓練センターはルーマニア空軍単独で運用されるものではなく、その運営にはNATO諸国も大きく関わります。施設と場所はルーマニアが提供しますが、訓練に使うF-16はオランダ空軍が提供し(求人情報に元オランダ空軍のF-16と記載)、人材はドラケン・インターナショナルが派遣。単独の訓練基地ではなく、NATOとそのパートナー国パイロットの訓練も受け入れ、ヨーロッパ全体の訓練拠点として整備されるといいます。

 しかも、そのパートナー国には、ウクライナ空軍も含まれるそうです。

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民間軍事会社ドラケン・インターナショナルが出した求人情報。ルーマニアに勤務するF-16教官パイロットについて書かれている(画像:ドラケン・インターナショナル)。

 2022年2月以降、国土の東側がロシアによって侵略されているウクライナは、自国で運用する旧式の旧ソ連(ロシア)製戦闘機よりも高性能なアメリカ製F-16戦闘機の供与を求めていました。7月にリトアニアで開催されたNATO首脳会議では、イギリス、ルーマニア、オランダ、ノルウェーなど11か国が、その支援のためにパイロットと支援要員の訓練を提供する協定をウクライナと締結しています。そして、8月にはオランダとデンマークが機体の供与を正式発表し、さらにデンマークではパイロットと整備員が訓練のために入国しているといいます。

 ルーマニアのメディアによれば、NATOによるウクライナへのF-16支援の一環として、新しく作られる第86空軍基地のF-16訓練センターでも、同空軍のパイロットの訓練を受け入れる予定があるとのこと。

 実際、F-16訓練センターはまだ稼働しておらず、ドラケン・インターナショナルの求人にも「2023年9月頃から始まり、19か月契約期間」と書かれています。他のNATO諸国のF-16支援と同様に、訓練センターもこれから活動が始まっていく創設段階といえるでしょう。

【迷彩が独特】ルーマニア空軍のF-16戦闘機(写真)

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