ナゾ求人「F-16戦闘機の経験者/勤務地ルーマニア」民間企業がなぜ? まもなく実現「国際F-16学校」構想とは
条件厳しすぎ? 素人さんはご遠慮下さいの求人条件
しかし、訓練を行う人材を民間企業が提供しても大丈夫なのでしょうか。そもそも最新の技術は、実際に運用している各国の空軍将兵が行う方がベストのようにも思えます。
まだ稼働していないため、F-16訓練センターでどのような訓練が行われるかは不明ですが、ドラケン・インターナショナルの求人を見る限り、そこで求められる水準は現役の隊員とそれほど変わらないようです。
教官パイロットの応募資格を見ると「現在有効なF-16の操縦資格を保有」、「F-16での2000時間以上の飛行時間」、「500時間以上のF-16での教官としての飛行時間」とあります。これは実質的に、つい最近までF-16を操縦していたパイロットでしか応募できない内容といえるでしょう。
実際、ドラケン・インターナショナルで働くパイロットは退役間もない元軍人パイロットか、予備役として継続して軍務に着く現役パイロットばかりです。筆者もアメリカ本国のドラケン・インターナショナルを何度か取材したことがありますが、そこで働くパイロットはF-15やF-16といった現役戦闘機はもちろん、F-35やF-22といった第五世代戦闘機の操縦経験者が業務を担っていました。
同社が運用している戦闘機は、A-4「スカイホーク」や「ミラージュF1」といった現役から退いた旧型機が中心です。しかし、それを操縦するのは、現代の空中戦に精通した現役のパイロットばかりなのです。
今回、ルーマニアに作られるF-16訓練センターは、NATO諸国と民間企業が関わる特異な組織となります。しかし、ロシア侵攻や中国の軍拡によって注目を集めるようになった多国間での防衛協力体制を象徴する試みともいえるでしょう。ウクライナへのF-16支援は連日ニュースで話題となっていますが、提供される兵器だけでなく、その支援の内容についても注目すべきなのかもしれません。
【了】
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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