戦艦大和と並ぶ極秘兵器は武装全部盛り その名は「鉄竜」 中国人が恐れた“陸上軍艦”とは

威圧感は与えたが… 本領発揮はできず

 九四式装甲列車は砲火力を全て前方に集中できるようになっていたのが特徴です。歩兵を直接支援する突撃砲に近いといえるでしょう。平坦な高規格軌道なら、最高80km/h走行も可能だったといいますから、兵員輸送列車と組み合わせた装甲列車隊なら、戦車にも勝る「電撃戦」ができたかもしれません。

 旧陸軍は九四式装甲列車を「極秘」に指定して、存在自体を軍事機密としました。ちなみに「臨時装甲列車」も秘密指定されています。九四式装甲列車の威圧感は圧倒的で、日本軍将校も陸上軍艦のようだと評し、中国人は「鉄竜」と呼んだそうです。

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線路幅(ゲージ)の異なるソ連領内シベリア鉄道も走行できるように車輪幅を変更することもできた(画像:月刊PANZER編集部)。

 しかし九四式装甲列車が完成したころになると、装甲列車隊も満州事変の時のような積極攻勢的な「鉄道戦」よりも、抗日ゲリラに対する鉄道守備が主任務となり、高い戦闘力は持て余し気味でした。

 抗日ゲリラにとっては「鉄竜」と戦っても勝ち目がないことは明らかなので、不定期でもパトロール運行するだけで襲撃をあきらめさせる抑止力にはなったようです。活動記録がほとんど残っていないのは、パトロール運行しかなかったことを示しているようです。抑止力を発揮して戦闘を起こさせず、線路を護ったことは戦果ですが、1編成だけではその抑止力も限定的でした。

 終戦後は中国軍に接収されたと思われますが行方はよく分かっていません。九四式装甲列車は存在が秘匿された兵器でしたが、その威力を発揮することなく消えていきました。スケールは違いますが、時代に置いて行かれた戦艦「大和」にも重なって見えてきます。

【了】

【走る要塞!!】「鉄竜」こと九四式装甲列車の全貌(写真)

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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