国産と輸入どっちも必要!? 自衛隊の新たな「戦闘車両」なぜ2車種調達 実のところ“たまたま”?
96式装輪装甲車の後継となるAMV
では、もう一方の次期装輪装甲車は、何の後継なのでしょうか。こちらは一般的な普通科連隊や後方支援連隊などに配備されている96式装輪装甲車を更新する予定です。この次期装輪装甲車にはフィンランドの企業であるパトリア社が製造したAMVが採用されます。
こう見ると、どちらか一系統に統一できないものかと考えるのですが、前述したように、そもそも別事業であったため、統一するのが難しく、結果2種類の新たな装輪装甲車が導入されることになった模様です。
なぜ新型装輪装甲車の選定事業が2つもあったのかというと、そもそも敵の脅威レベルが高い地域へ真っ先に進出する即応機動連隊と偵察戦闘大隊に対して配備されるのが共通戦術装輪車。敵の脅威レベルが低い地域に進出するのが一般的な普通科連隊であり、そこに配備するのが次期装輪装甲車と分けて考えられていたからのようです。
当初は次期装輪装甲車よりも共通戦術装輪車の方が攻撃力や防御力、そして機動力といった総合的な戦闘力が高いと判断されていたのですが、実際には、海外で販売実績があり一定の評価がされているAMVが次期装輪装甲車として選定されました。
実際、防衛省が公開した「令和6年度概算要求」では、共通戦術装輪車の取得理由に関しては「機動戦闘車等と連携し、機動的に侵攻部隊対処を行うため」としている一方、次期装輪装甲車(AMV)については、「現有の96式装輪装甲車の後継として」と、はっきり明記されていました。
似ているようで、別々の枠組みで調達される共通戦術装輪車と次期装輪装甲車(AMV)。ちなみに、当初は輸入することになるであろうフィンランド製のAMVも、ゆくゆくは国内メーカーによるライセンス生産が行われると考えられます。
いずれにせよ、我が国の陸上戦闘における主要な装備品であることから、隊員が使いやすく、かつ合理的な評価が下され、国民の生命と財産を守るために明確な目的をもって必要数が取得されることを願っています。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
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