日本から消える「74式戦車」もしウクライナに供与されたら? 使えるのか? 独の同世代戦車は奮闘中

弱点克服できれば意外と強いかも

 しかしその一方で、地形に応じて、車体を前後左右に傾けたり、車高を変換して隠ぺい性を向上させたりすることができるので、現代のMBTにはどうしても劣る防御力を、姿勢変換機能をうまく使うことでフォローできると思われます。そのように考えていくと、74式戦車は戦車壕を用いた防御戦闘などに好適なのではないでしょうか。

 具体的には、2両で1組の射撃班を2組、つまり4両で1個射撃隊として、1両あたり数個所の隠蔽された戦車壕を用意し、機甲歩兵と連携した防御戦闘に従事します。4両1単位(いわゆる小隊)というのは陸上自衛隊を含め、多くの軍隊で用いられているので運用の基本としては妥当でしょう。

 とはいえ、防戦に専従させるので、射撃班内の2両は連携を密にして2両で同一の敵戦車を狙い撃つような、第2次世界大戦中の対戦車自走砲(より攻勢向けの駆逐戦車ではない)的な手堅い戦い方が適しているのではないでしょうか。

 なお、74式戦車はゼロヨン的なダッシュ力、すなわち加速性能が良好なので、戦車壕から戦車壕への陣地変換を素早く行えるのが、生残性も含めた戦術上の長所になりそうです。

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訓練中の74式戦車。陣地防御であれば74式戦車の油気圧サスペンションは、姿勢を自在に変えることができるため、かなり高い隠ぺい効果を発揮するのに役立つ(画像:陸上自衛隊)。

 このように、現時点において74式戦車を活用するには、第2次世界大戦時の対戦車自走砲などと同じく、防御戦闘を中心に用いるのが得策ではないかと思われます。しかし装甲厚の面では、本車はレオパルド1と同等かまたはやや秀でているとも伝えられますので、もし部品供給がしっかりとできて、足回りのメンテナンスさえ確実に行えれば、「レオパルト1」と同じように使うことも可能でしょう。

 こうして考えてみると、油気圧サスペンションの車高変換能力のおかげで地形追従に秀でた74式戦車は、なだらかな地形が多いウクライナの戦場で、意外な強みを発揮できるのではないかと筆者(白石光:戦史研究家)は考えます。

 74式戦車は優秀ですから、残存数は不明ですが、必要量の予備部品とともに50両以上のまとまった数で提供できれば、古いながらも相当な戦力となりそうです。

【了】

【見たことある? 74式戦車の発煙弾】弾込め→発射の瞬間も(写真)

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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コメント

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2件のコメント

  1. 74式は砲塔を正面から見たらタヌキに見えるので、その可愛さからロシア兵が攻撃をためらう効果が期待できる。

    74たんカワイイ…

  2. 陸自ですら持て余してるのに。