海自艦が米空母“護衛”も 自衛隊は「9.11」でどう変わったか 改められた“警察頼み”

「守り方」が変わった自衛隊施設

 アメリカ同時多発テロ事件によって、法律面にも大きな変化をもたらしました。その中でも代表的なものが、「自衛隊の施設の警護のための武器の使用」です。従来、自衛隊の施設の中で武器を使用して警護を行うことができたのは、武器庫など特定の部分に限定されていました。そのため、施設の大半は武器使用を伴わない形での警備ができるのみだったのです。

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2015年11月、アメリカ海軍の施設内でアクティブシューターが発生したという想定で、日米共同訓練が実施された(画像:アメリカ国防総省)。

 これは、自衛隊の施設に誰かが侵入してきたとしても、施設の破壊は容易ではなく、時間も要することから、警察による対応で事足りると考えられていたためです。ところがアメリカ同時多発テロでは、民間旅客機を使って、平時に民間人が軍事施設などに大規模な攻撃を仕掛けることが可能であると判明しました。そこで、そうした場合なども考慮して自衛隊法が改正され、平時から自衛官による武器を使用する形での施設警護が可能になったのです。

 また、自衛隊の施設や在日米軍の施設などに対するテロ攻撃が発生するおそれがある場合に、自衛隊の部隊を出動させてこれを警護させることができる「自衛隊の施設等の警護出動」という規定も、自衛隊法の中に新設されました。これにより、平時から大規模テロの発生が差し迫っているような場合にかけて、自衛隊の施設をしっかり警護できるようになったというわけです。

 現在でも、他国からの軍事侵攻のみならず、平時におけるテロ攻撃も日本の安全保障上の重大な脅威となっています。アメリカ同時多発テロという大事件を受けて、日本の安全保障法制は新たな時代を迎えたといえるでしょう。

【了】

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Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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