「中国には勝てない」の烙印 M1エイブラムスはいつまで世界最強でいられるか アメリカ自身が押したワケ

レポートの理由は2つ

 その理由として陸軍科学委員会は、第1にM1の基本設計が時代遅れで、高度にネットワーク化された作戦環境に適合できないと主張しています。ナゴルノ・カラバフ戦争やウクライナ戦争で判明したように、戦車の敵は対戦車ミサイルや徘徊型弾薬(自爆ドローン)、対戦車地雷、無人航空機(ドローン)など増える一方です。

 現代の戦いは、直接の戦闘は局地的でも作戦領域は陸海空宇宙にまで広がって複雑化しており、情報、出来事、兵器システムのスピードは加速して、当事者の意思決定サイクルや反応時間は短くなっています。そのような環境では、単に大きな主砲と厚い装甲、強力なエンジンだけでは戦場の主導権を取れなくなっているのです。

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第1騎兵師団第1機甲旅団戦闘団の第12騎兵連隊第2大隊の公式Facebookに投稿された、M1A2SEPv4のプロトタイプと思われる写真。

 第2に大きくて重すぎるため、戦術的、作戦的、戦略的機動性に欠けることを挙げています。SEPv3では戦闘重量が74tにまで達しており、運ぶのも動くのも大きな負担です。SEPv4ではさらに重くなりそうでした。

 陸軍科学委員会が実施した太平洋地域有事シミュレーションでは、中国が既成事実を達成するまでに、アメリカ軍は十分な数の機甲戦力を送ることができませんでした。従来の重装甲部隊を長距離展開し維持する海上輸送能力の限界と、空輸能力の欠如が明らかになってしまったのです。

 機甲旅団戦闘団(ABCT)1個を本土から太平洋地域に海上輸送するには約90日が必要なうえ、輸送船舶は老朽化しています。空輸するにはC-17輸送機で575ソーティ(延べ出撃機数)必要ですが、アメリカは223機しか保有していません。アメリカ陸軍は太平洋地域への戦車増備の意思を固めており、機甲戦力の軽量化は課題であることを認めています。

【え…!】最新型「エイブラムスX」です

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