ソニーホンダのEVは結局だれに“刺さる”のか 日本初公開「アフィーラ」 “走るスマホ”になる部分、ならない部分

走りの部分は「守る」

 川西氏はその実現のために、「(SHMは)アフィーラの車両データや走行データのうち、開示できる情報はできるだけ多くセキュア(安全な状態)に提供し、その上でクラウドAPIを用意してクラウド経由でサーバ間連携等も容易にする」(川西氏)と説明。これは多くのディベロッパーやクリエイターが参加できるよう、随時情報をアップデートしていきやすくするための戦略とも言えます。

 ちなみに、SDVの分野で先行しているテスラは、金銭を支払うことで新たな機能が体験できるサービスをすでに提供中で、ソフトウェアをライセンスで売ったり、サブスクで売ったりする新たなスタイルを確立しています。ここにはクルマというハードウェアを販売した後に、ソフトウェアの提供によって新たな収益を確保していくビジネスモデルの姿があります。SHMもアフィーラの展開にあたっては、そういった発想を抱いて臨もうとしているのは間違いないでしょう。

 とはいえ、アフィーラではこうしたソフトウェアによる進化は、クルマの安全性を左右する部分にまでは取り入れないといいます。川西氏は「情報をオープンにしていくことと、クルマを制御することは別の話。どちらも(オープンで対応)できればいいと思うが、安心・安全がまずは第一となるのは言うまでもない」と説明しています。つまり、「セキュリティ上の問題も含め、守るべきところは守っていく」(川西氏)というわけです。

 このことから感じ取れるのは、車両としての走行に関することは、安全性も含め、経験豊富なホンダに任せ、ソフトウェアのオープン化はあくまでソニーが得意とするエンタテイメントの世界で展開していこうとの目論みです。一方でアフィーラには45個ものカメラやセンサーが搭載されており、これを活かした運転アシスト、さらには自動運転のソフトウェア開発を目指しているのも間違いないでしょう。

狙いはクルマ好きでは全くない?

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アフィーラの概要について説明するSHM代表取締役社長 兼 COOの川西 泉氏(会田 肇撮影)。

 前述したように、ソニーはこれまで育て上げてきた“ガジェット好き”とされる多くのファンを抱えています。こうしたユーザーを対象に、エンターテイメントの分野でアフィーラのユーザーとして取り込み、モビリティという世界で新たなニーズを巻き起こす――詳細は後日発表されるということで、内容が変更になる可能性は十分考えられますが、そんな想いがこのプロトタイプからは感じ取れました。

 ただ、現実を踏まえれば、SDVのスタイルがクルマの制御を含む領域にまで進出するのは時間の問題とされています。特にこうしたデジタルの領域は、あることがきっかけとなって急速に進む傾向にあり、アフィーラが販売を開始する2025年にはそれが実現している可能性は十分に考えられます。

 そうした時代の流れに2025年の発売までの約2年間でSHMがどう対応していき、どんなアイディアで我々を魅了してくれるのか。その結果を今から楽しみに待ちたいと思います。なお、このアフィーラのプロトタイプは、東京ビッグサイトで10月28日から始まる「ジャパンモビリティショー2023」で一般に公開されます。

【了】

【え…】「ソニーが車つくるとこうなります」な細部(写真)

Writer: 会田 肇(乗り物ライター)

茨城県出身。自動車雑誌編集者を経て、フリーランスへ転身。音楽を聴きながらドライブするのが大好きで、それがカーナビやカーオディオ評論を行うきっかけとなった。近年は自動運転に絡むITSの取材活動も力を注ぐ。日本自動車ジャーナリスト協会会員。デジタルカメラグランプリ審査員。

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