「海賊だーー!」自衛隊は攻撃できる? テロリスト相手だと“判断”が異なるワケ

ケース2 海上警備行動

 もう1つは、「海上警備行動」による対処です。海上警備行動とは、「海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合」(自衛隊法第82条)に、自衛隊の部隊によって行われるものです。

 基本的に、海上の治安維持は海上保安庁の仕事ですが、現場海域が遠く離れているとか、または相手が重武装であるとかで、同庁による対応が困難な場合もあり得ます。そうした際に、自衛隊が海上保安庁の仕事を肩代わりするのが、海上警備行動です。

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インド洋でスリランカ海軍と共同訓練を行う海上自衛隊のP-3C哨戒機(画像:海上自衛隊)。

 ただ、海上警備行動の場合、海賊対処行動と比べていくつかの制約があります。まず、助けることができる船舶が限定されます。自衛隊法第82条にある「海上における人命もしくは財産」とは、基本的に日本人や日本に関連するものを指しています。そのため、海上警備行動において保護されるのは、
1、日本籍船
2、日本人が乗船する外国籍船
3、日本の船舶運航事業者が運航する外国籍船または日本の積荷を輸送している外国籍船であって、日本国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶という3種類の船舶に限定されています。ちなみに、これらは「日本関係船舶」と呼ばれます。

 さらに、武器使用ができる状況も異なります。海賊対処行動であれば、制止に従わない船が他の船を追跡するような状況では、これを止めさせるための停船射撃を行うことができます。

 しかし、これは海賊対処法特有の規定であるため、単に警察官職務執行法第7条の準用にとどまる海上警備行動の場合には、こうした形での武器使用を行うことが難しいのです。また、武器使用など一定の実力を行使してまで防護できるのは、先ほど紹介した船舶のうち、「1」の日本籍船に限定されるというのが日本政府の見解です。

 今後、海上自衛隊の護衛艦がいかなる事態に対処するのかはわかりませんが、このように「海賊対処行動」「海上警備行動」いずれのパターンでも複数の対応策があるため、状況に応じてさまざまな手段を講じることが可能です。

 ただ、最善なのはそういった事案がないこと。「フーシ派」を含め武装組織による襲撃など起こらないことを筆者は願って止みません。

【了】

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