「国産輸送機つくるけど外国機を採用します」なぜ? 韓国の決定に国家のしたたかさを見た!

ブラジル製輸送機の導入こそMC-X開発の布石か?

 MC-Xの開発を進めるKAIは、戦闘機や練習機こそ実機の製造まで果たしていますが、それらよりも大きな機体を自主開発した経験はありません。一方のエンブラエルは旅客機の開発によってそのようなノウハウを豊富に持っています。

 今回のC-390導入決定でも、採用の理由は他の候補機と比較して価格面で有利だっただけでなく、その導入契約には機体部品の韓国国内企業の製造や、韓国が独自に行うMRO(保守・修理・オーバーホール)支援体制の確立などが含まれていました。こういったことを鑑みると、機体売買以上の付加価値が韓国とブラジル、双方にあることは明らかです。

 ひょっとしたら、MC-Xの開発を滞りなく進めていくうえで、韓国サイドはあえてC-390を導入し、それをもって国内メーカーの技術を引き上げるとともに、場合によってはエンブラエルに協力してもらおうと考えているのではないでしょうか。

Large 231207 mcx 04

拡大画像

韓国空軍が現在運用するC-130H「ハーキュリーズ」輸送機(画像:韓国空軍)。

 現在、韓国の防衛産業は盛況であり、国産装備品の輸出についても多くの成功実績を積み上げています。しかし、今回のMC-Xプロジェクトの背景が示すように、その多くは韓国国内だけの限られた需要と予算で国産開発を進めるのは難しく、輸出による増産が開発計画を維持するうえで必須だと言えるでしょう。実際、そのように外国における需要を盛り込んでようやくモノになった事例は多々あります。

 また、国内の自主開発を行うにあたっては、その前段階として海外装備品のライセンス生産や技術移転、業務提携などを地道に重ねています。

 MC-Xを含め、今後の韓国空軍の新型機導入については、国産機と外国機などという単純な色分けや機体性能だけで判断するのではなく、産業も含めた俯瞰的な視点で見ていく必要があるのではないかと、今回のC-390採用決定を見て筆者は感じました。

【了】

【並べると一目瞭然!】韓国空軍の輸送機3種類とMC-X、日本製C-2のサイズ比較

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。