「千円でもいいから食べたい!」 超レトロ “オートレストランのうどん自販機”を再生! 実は「複雑な機械」オーナーに聞いた

とにかく食べたい!「1000円でもいいから」

 うどん自販機は汁物を扱うため、錆などで内部の痛みが激しかったのだとか。それでも食品を扱う以上は修復を完璧に行う必要がありました。

 まず、不足した部品を入手するために、部品取り用として同型の自販機を複数台入手。そこからパーツを抜き出して、動作する自販機を1台組み上げました。また、実際の修理作業は、このような古い機械のノウハウを持っている関東の業者の協力してもらい進めたとのことでした。

 ただ、うどん自販機の修復作業にあまり多くの手間と費用を掛けてしまうと、そのしわ寄せは販売価格の高騰へと繋がってしまいます。杉本さんも当初は商売的に難しいと考えていたようですが、お客さんからの「値段が1000円でもこの自販機のうどんを食べてみたい」という声が後押しになり、無事に修復を終えることができたと語っていました。

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三洋電機製のみそ汁自販機。恐らく日本国内で現存しているのはここだけではないかとのこと。2024年1月現在はメンテナンス中(布留川 司撮影)。

 約1年の歳月を経て修復されたうどん自販機は、現在も「岐阜レトロミュージアム」の軽食コーナーで稼働しています。2024年1月現在の提供価格は1食500円で、お揚げ入りのきつねうどんを頂くことができます。

 価格については杉本さんによれば、自販機が置かれた施設の営業時間も関係しているそうです。「ここは営業時間が昼間だけで、休館日もあります。24時間販売できる既存の施設と比べて、食品の廃棄が必ず出てしまうので、それらを考慮すると500円が限界ギリギリの価格設定になります」

 なお、メニューは基本的にうどんのみですが、年始などの特別な日には日本そばに入れ替えられることもあるそうです。

 筆者が取材した2023年末には、うどん自販機、ハンバーガー自販機、アイスクリーム自販機、ガム自販機、カップヌードル自販機(お湯はセルフ)が稼働しており、それ以外にも食品用自販機でパン類やレトルトカレーが売られていました(備え付けの電子レンジで温め可能)。

 なお、日本国内ではおそらくここにしかないであろう三洋電機製のみそ汁自販機も置かれていたものの、こちらは現在メンテナンス中で稼働はしていませんでした。

 これら自販機を利用するには「岐阜レトロミュージアム」で入場券を買う必要があります。価格は1時間800円、3時間2000円、1日3000円(小学生、児童割引あり)です。施設内のゲーム機は、パチンコと同様に入場料のみで楽しめるフリープレイ方式なので、オートレストランの食事を楽しみながら、それが全盛期だった昭和の文化を体験することができます。

 40代以上ならば懐かしさ、それ以下の年代ならば歴史の1ページになった「昭和レトロ」を堪能できるのではないでしょうか。

【了】

【お揚げとネギはドコ?】これが、自販機から提供される「きつねうどん」です

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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