世界の造船シェア「中韓で8割」どうしてそうなった 昔は日本が5割 今の追い風にもうまく乗れないワケ

これからも新造船需要は増大

 さらにIMO(国際海事機関)や大手船社などが2050年GHG(温室効果ガス)排出ゼロを掲げる中、環境に優しい船舶の需要も高まっています。日本造船工業会によれば、全世界の新造船建造量は年間約5500万総トン(2022年)。既存のディーゼル船をLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)、水素、アンモニア、メタノールなどを使用する新燃料船へ置き換えるには、2030年以降で年間1億総トンレベルの建造が必要とされています。

 日本舶用工業会の木下茂樹会長(ダイハツディーゼル会長)も「造船業を取り巻く環境は、2020年までの減少傾向からコンテナ、ばら積み船をはじめとして増加に転じている。リーマン・ショック前に大量に発注されて竣工した船舶のリプレースやIMOのGHG削減戦略の強化で、世界の新造船需要は増大していくだろう」と期待を寄せています。

 とはいえ、日本の立ち位置を見ると楽観視できる状況ではありません。そもそも日本の造船業は1956年に建造量が世界1位となり、一時はシェア率50%を誇っていました。

 しかしオイルショック後の造船不況期、2度にわたって生産設備を削減し新造船の建造能力を落とす一方、1980年代から韓国が、1990年代から中国がそれぞれ大規模な造船所を整備。中韓の建造量が伸びていく中で日本は受注量もシェア率も落としていき、2022年の新造船受注のシェア率は中国が47%、韓国が30%、そして日本が17%という状況になっています。竣工量も日本は950万総トンですが、2位の韓国は1630万総トン、1位の中国は2570万総トンと大きく水をあけられています。

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川崎汽船が建造したLNG輸送船「LAGENDA SETIA」。中国の滬東中華造船が建造(画像:川崎汽船)。

 私たちの生活に欠かせない電気を作る発電所の燃料として使われる天然ガスを運ぶLNG船も、かつては三菱重工業や川崎重工業などが手掛けていましたが、今は日本企業が受注に手を上げることも、建造を行うこともなくなっています。例えばカタールの国営エネルギー会社カタールエナジーが進める100隻規模のLNG船新造では、韓国のHD現代重工業、ハンファオーシャン(旧大宇造船海洋)、サムスン重工業と、中国の滬東中華造船がそれぞれ受注し建造を手掛ける見込みです。

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コメント

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2件のコメント

  1. 長きに渡る円高不況だったんだから製造の輸出系がシェア争いで負けるのは必然というか
    政府の政策が悪い

  2. 日本は原料調達の時点で負けてる。

    なんでもそう。