平成の「房総特急」はここまでスゴかった! 定期引退の255系を振り返る “ほぼ変わらず”令和まで

それでもグリーン車を指名買いした

 255系のグリーン車は、偏心回転機構を採用して座席と通路の隙間を詰め、座席幅をやや広く取ったとはいえ、室内の配色も普通車とほぼ同じで、一見すると「中間肘掛けがあって座席間隔がやや広く、荷物棚の形が違うだけ」。グリーン車感はあまり感じられないものでした。

 それでも筆者は世評があまりよくないグリーン車が好きでした。特に下り列車では5番の列を指名買いしました。なぜなら旧禁煙室と喫煙室の仕切りであるガラス壁があって、前の座席が遠いうえに側窓も広く使え、とても解放感があったからです。

 そのほか、運転台後ろのデッキには前面展望可能な大窓が設置され、当時はハイグレードな設備だった電話室も備えました。走行機器まわりでは、JR東日本で初となるVVVFインバーターを採用しました。

 255系は1994(平成6)年、1次車での意見を反映し、2次車として3編成が作られました。2次車では側窓の上下寸法が6cm拡大されたり、グリーン車の通路が全面的に絨毯敷きになったり、各座席に読書灯が備わったりと、改良が加えられています。

 同じころ、房総地区へのアクセス道路として、東関東自動車道や東京湾アクアラインが延伸・建設されていました。255系は内房線では特急「ビューさざなみ」、外房線では特急「ビューわかしお」としてデビューします。

 その後、編成分割のできるE257系500番台の登場もあり、9両固定編成の255系は、総武本線の特急「しおさい」や、輸送力が必要な朝ラッシュ時の特急運用、土休日の「新宿さざなみ」などでの運用が多くなりました。珍しいところでは、週末の鹿島線特急「あやめ」や、中央本線で特急「ビューかいじ」として走ったこともあります。

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E257系電車500番台を使用した特急「わかしお」(伊藤真悟撮影)。

 それから30年。改良された点といっても、走行装置の更新や行先表示器のLED化くらいで、ほぼ原形のまま運行されてきましたが、老朽化もあり、2024年3月15日で定期運用を終えることになったのです。

 臨時列車としての255系の活躍がいつまで続くかは分かりませんが、「新宿さざなみ」はグリーン車連結の9両編成で運行されるようです。イベント専用列車での活用など、末永い活躍を願う次第です。

【了】

評価が分かれた!? これが255系のグリーン車です(写真)

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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