酷寒! 自衛隊「八甲田演習」全行程に密着「大量遭難」から122年後も毎年実施する “意味”

青森県に所在する陸上自衛隊の部隊は毎年、八甲田山の裾野で冬季演習を行っています。これは戦技の向上を図るだけでなく、120年ほど前に起きた旧陸軍の大量遭難事件の慰霊も兼ねているそう。今回、密着取材してきました。

青森第5連隊の10倍以上を無事踏破した奇跡の部隊

 1週間ほど前の1月18日に行われた事前訓練は好天に恵まれたものの、天候が急激に悪化することで知られている八甲田周辺では、本番である出発当日は暴風雨の兆しがすでに表れていました。

 さらに、将兵の装備は10年ほど前の日清戦争時とほぼ変わらない、寒さには脆弱なもののまま。それに加えて、軍医からは「露営地では寝ないように」との指示もあったといわれています。

 そして、さらに事態を悪化させた原因として「現地住民による案内人の拒否」「山奥の温泉地で1泊して帰るだけ」といった、厳冬期の雪山に入っていくにはあまりにも雑で無謀な計画だったことも、残された資料によって明らかになっています。

 こうした天候による悪条件と、準備不足が積み重なり、210名中199名が命を落としてしまったのです。

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冬季装備を身にまとい、マイナス8度の八甲田山麓を走破する第5普通科連隊の隊員たち(武若雅哉撮影)。

 他方、時同じくして八甲田を目指すもうひとつの部隊がありました。それが青森県西部の弘前市に連隊本部を置いていた歩兵第31連隊(当時)です。

 歩兵第31連隊は、日清戦争後の1896(明治29)年に創設された部隊で、偶然にも同じ日に弘前を出発し、十和田湖、三本木、田代、青森、浪岡を経由し、弘前へ戻る、総延長約224km、11泊12日間の雪中行軍を計画していました。

 ただ、歩兵第5連隊がほぼ壊滅したのに対して、歩兵第31連隊は総勢37名の精鋭だけが参加し、住民による案内人を付けていたほか、宿泊や食事などはあらかじめ現地住民に協力を求められないか役場に依頼するなどしていました。また、凍傷や低体温を予防するための準備も入念に行われていたため、歩兵第5連隊よりも長期間、長距離の雪中行軍だったにも関わらず、途中で負傷し帰還した1名を除き、全員が無事に弘前まで戻っています。

 こうした歴史を持つ旧日本陸軍の歩兵第5連隊と同じ部隊ナンバーを持つ陸上自衛隊の第5普通科連隊。この時期になると、歩兵第5連隊が残した遺訓を受け継ぐため、毎年のように雪中行進訓練を行っているのです。

【若い女性隊員の姿も】慣れないスキーに悪戦苦闘する若手隊員ほか(写真)

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