酷寒! 自衛隊「八甲田演習」全行程に密着「大量遭難」から122年後も毎年実施する “意味”

青森県に所在する陸上自衛隊の部隊は毎年、八甲田山の裾野で冬季演習を行っています。これは戦技の向上を図るだけでなく、120年ほど前に起きた旧陸軍の大量遭難事件の慰霊も兼ねているそう。今回、密着取材してきました。

体感温度はマイナス20度? 2024年の八甲田演習

 今回の冬季演習のルートは約7.5km。隊員は約20kgの装備を背負い、列を組んで歩き始めます。

 行進開始時の気温は持参した温度計でマイナス6度。歩き進め高度を上げていくほど気温は下がっていきます。最終的な気温は手元の温度計でマイナス8度、スマートフォンの天気アプリではマイナス12度と表示されていました。なお、当日は視界を奪うほどの暴風雪であったため、体感温度はもしかしたらマイナス20度を下回っていたかもしれません。

 それでも、問題なく踏破できたのは、120年ほど前の遭難事件当時とは全く異なる装備を持っていたからです。

 現在の陸上自衛隊が持つ冬季装備は、当時とは比較にならないほど快適に進化しています。戦闘防寒服は透湿防水性を持ち、インナーも保温力に長けています。全てを適切に装着すれば、マイナス30度のなかでも行動できるように設計されているともいわれています。

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数少ない八甲田遭難事故の生き残りである後藤伍長の銅像前で敬礼する連隊長以下幕僚たち(武若雅哉撮影)。

 また、自衛隊のスキーは一般的なスキーと異なり、革靴にかかとが浮くタイプの、いわゆるクロスカントリースタイルのスキーです。これは、慣れている隊員は余裕があるものの、不慣れな若年隊員には歩くだけでも大変な装備でもあります。

 しかし、それでも雪中では段違いに行動力が上がります。ちなみに、不慣れな若年隊員も先輩隊員からのアドバイスを受けて踏破していました。彼らは、最初こそ不安そうな表情でしたが、最後には笑顔を見せてくれました。

 なお、今年の行進訓練は、この後に大きな訓練が控えているということで、例年行う雪中野営は取り止めとなっていました。そのため、行事そのものは雪中行軍の生存者の1人である後藤伍長の銅像に敬礼を捧げて締めくくられています。

 今回、筆者(武若雅哉:軍事フォトライター)は第9師団および青森駐屯地の広報担当者の協力を得て全行程に同行させてもらいましたが、厳冬期における八甲田山麓の厳しさを、身をもって体感することができ、冬季装備と事前計画の重要性を再認識させられました。

 最後に、この場をお借りして、犠牲となった199名の将兵に対し、改めて追悼の意を表します。

【了】

【若い女性隊員の姿も】慣れないスキーに悪戦苦闘する若手隊員ほか(写真)

Writer:

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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