「超ド級」の意味知ってますか? 世界の“技術革命”な軍艦3選「国家戦略」すら塗り替えた!?
建造され続けて40年!? イージス駆逐艦「アーレイ・バーク」
原子力潜水艦「ノーチラス」と同じく、アメリカ海軍が設計・開発し、その後世界中で同じような形の軍艦が建造されるきっかけを作ったといえるのが、1991年7月4日のアメリカ独立記念日に就役した同国海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦です。
同艦は1970年代後半に研究開発が始まり、1980年代後半より建造が開始された、当時のアメリカ海軍の次代を担う主力駆逐艦でした。それ以来、40年ほどたった2024年現在も最新の改良型が建造され続けており、現在の計画では92隻が就役する予定となっています。
軍艦の船体を「器」として考えれば、そこに搭載される電子機器や兵装は「料理」に例えられます。その場合、「料理」の種類を変えることにより、改良型を生み出すことは十分に可能ですが、これだけ長期間にわたって通用する「器(船体)」というのは、まさに画期的な設計だといえるでしょう。
2000年代に入ると、アメリカ海軍は次世代の主力艦としてズムウォルト級ミサイル駆逐艦の開発をぶち上げます。しかし、そのコンセプトやコスト面、さらには運用上の問題などの難点が表面化して3隻で調達を中止しました。
代わりに、長年にわたり運用実績を積み重ねてプルーフィング(信頼性確認)が終わっている、アーレイ・バーク級という安心の「器」に、最新のシステムや兵器という新しい「料理」を盛り込む方向性が、互換性やコストパフォーマンス(費用対効果)の面でもっとも優れていると改めて判断されました。
これはつまり、1番艦の起工からすでに40年間造り続けられているアーレイ・バーク級という「器」が、近未来にも通用すると認められたわけで、同級の戦闘艦(の船体)としてのコンセプトがいかに優れているかということの証左といえるでしょう。
近代軍艦史上、あまりに画期的だった戦艦「ドレッドノート」。軍艦史上を超えて、人類の科学史上に大きな足跡を残した原子力潜水艦「ノーチラス」。軍艦はあくまで「器」であり、その観点ではきわめて優れた存在と評価されたミサイル駆逐艦のアーレイ・バーク級。
この3艦こそが、「革命艦」と呼ぶに相応しい軍艦なのではないでしょうか。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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