とうとう政府主導で「物流賃上げ」へ 荷待ち・荷役も「お金とれ」&「空荷で走るな」 示された数値目標は実現できるのか
ガイドラインは「1時間減らせ」政府目標は「30分以上減らせ」…食い違い?
物流ドライバーの就労日数は年間250日です。荷待ち・荷役時間を年換算すると750時間で、ガイドライン通りに3時間から2時間の短縮が実現すると年間250時間短縮できることになります。しかし、官民の意見交換会に示された「政府の中長期計画」では、この削減時間の目標について「年間125時間以上」と定められました。なぜでしょうか。国交省物流政策課は、次のように説明します。
「ガイドラインはあくまで企業の自主的な取り組みであるのに対して、政府の中長期計画は実現すべき内容で、その趣旨に違いがある。ガイドラインの内容については、一定規模の荷主となる企業の半数が実現可能と回答しているので、平均的に考えると荷待ち・荷役時間は1時間の半分、30分は達成(削減)が確実と考えられる。そのため保守的に見積もって125時間の削減目標を掲げた」
復路の荷物も「取りに行け」
トラックが空気を運んでいる、という積載率の問題も、輸送力が不足する大きな要因です。営業用トラックの積載率は38%。直近の約10年で40%を下回る数字で推移しています。平均すると、しばしば高速道路で過積載が問題になるイメージとは遠い実態です。そのため積載率を50%まで引き上げることが急がれています。
個社の枠を超えた共同配送や、往路だけ荷物を積むのではなく、復路でも荷物を確保することが求められています。長期計画では、2030年度までに積載率を44%まで引き上げることを目標にしました。
発注から納品までの期間(納品リードタイム)をできるだけ短縮しようとすると、トラックは空荷のまま帰らなければなりません。納品リードタイムを十分に確保することを規制的に実施し、納品リードタイムを短くせざるを得ない特別な事情がある場合には、自ら輸送手段を確保する「引取り物流」を規制的に実施することで、積載率をアップすることができるとしました。
現状維持では必要な輸送力が失われる――具体的な施策を積み上げて、不足する輸送力を確保する必要に迫られています。
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Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
『まだ来ないで、どこか他で待ってて』と言われるだけかと。