「ソ連の戦車、持ってます」 ウクライナ支援に博物館が関わるワケ 謎だらけの東側部品をカタチにする知見

イギリスはウクライナへの支援の一環で、兵士が扱いやすい旧ソ連製車両の部品の一部を新造するよう企業へ要請しました。しかし同じ形状のものを生産すればよいわけではありません。そこで企業が協力を仰いだのが、戦車博物館でした。

ボービントン戦車博物館にソ連製の実車が!

 このリバースエンジニアリングは同じ形状の物を造ればよいという簡単なものではありません。強力なエンジンの負荷を受け、数十トンの重さを支えて硬軟複雑な形状の地面に擦り付けられる履帯には大変なストレスがかかります。耐久性、強度、衝撃吸収性、耐候性、軽量性など複雑な要素を満足することが求められ、エンジンやサスペンション、車輪とのバランスを取ることも必要です。

 CDSの幹部は「当社には、イギリス陸軍および多くの同盟軍の装甲車両へ履帯を供給してきた長い歴史がありますが、ウクライナ向けに納入するとなると全く異なる課題があります」と明かしています。足回り技術のノウハウを蓄積しているCDSにとっても、ソ連製戦車は未経験、未知の構造・組成であり、まずその材質分析から始めなければならなかったのです。それ自体がイノベーションでした。

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クック・ディフェンス・システムズ(CDS)社のパンフレット(画像:クック・ディフェンス・システムズ)。

 手がかりになるのは旧ソ連時代の図面、ウクライナから取り寄せたサンプル、マニュアルなどです。しかし技術者がウクライナまで出張する必要はありませんでした。ボービントンに旧ソ連製の実車があったのです。そこでCDSはボービントンへ支援を要請しました。

 ボービントンの専門家とCDSは、西側で入手可能な技術で旧ソ連製と互換性がある部品を製造するため、協力してレーザースキャンやデジタルX線検査などを実施。旧ソ連製の仕様に適合する新しい鋼合金の開発、鋳物の鍛造および溶接部品の開発を行いました。

イギリスの博物館にある「旧ソ連戦車」(実物)

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