「排気量それしかないの!?」大きいのに小さなエンジン搭載車、なぜ増えた? 税金安くてエコ、とも限らない?
排気量をあえて上げよう
ところが、ターボ技術とハイブリッド技術が進化することで、同じパワーをより小さな排気量で実現することができるようになります。日本では1997年に最初のハイブリッドとなるトヨタ「プリウス」がデビューします。
エンジン車では、2000年代にフォルクスワーゲンが中心になってターボを利用することでパワーを追求するのではなく、元の排気量を小さくする「ダウンサイジング・ターボ」というアイデアが広がってゆきます。排気量を小さくすることで、低負荷時の効率を高めて燃費をアップさせようというわけです。
ところが、技術が進むほどに、さらなるアイデアが生まれました。それが「ライトサイジング」と「アップサイジング」です。
「ライトサイジング」とは適正な排気量にして燃費を向上させようというもの、「アップサイジング」は排気量を大きくして低回転しか使わないことで燃費をよくするという提案です。「アップサイジング」に熱心だったマツダでは、2014年にデビューした「デミオ(現・マツダ2)」を1.3リッターから2018年に1.5リッターに拡大。実用燃費を高めています。
同じように排気量を増やして燃費を高めるという方策は、ハイブリッドでも実施されています。たとえば、燃費を追求していた「プリウス」の2009年の3代目モデルは、エンジン排気量を先代の1.5リッターから1.8リッターに拡大しています。これにより、燃費性能は2代目モデルの35.5km/L(10・15モード)から、38.0km/L(10・15モード)に高めています。
最初は燃費を高めるために、排気量を小さくしたのですが、その後にまた大きくするというトレンドがやってきていたのです。
そう考えると、結局のところ、排気量は技術の進化に合わせて、小さくなったり大きくなったりすることになります。求めているのは優れた燃費性能であり走行性能です。その目標が先に存在あって、エンジン排気量は、その次になるというわけです。そして、燃費と走りは、年と共に確実に進化しているのは間違いありません。
ですから、いつまでもターボやハイブリッドのなかった時代の感覚で、エンジン排気量を見ていると、当然のようにズレを感じてしまうということでしょう。
【了】
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。
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