「空飛ぶ戦車」=「最強!」とはならず 「空挺戦車」がいまいちパッとしなかったワケ “軽さ”は別に活かされた
副産物で世界最速の戦車も作られる!?
また、空挺戦車を実戦投入した先駆者であるイギリスでも1970年代に、FV101「スコーピオン」という車両が開発されます。同車両は、偵察用装甲車と、空輸可能な空挺戦車を統合した戦闘車両として構想され、車体素材は「シェリダン」と同じくアルミを使用。さらに、市販のジャガー製XK6直列6気筒液冷ガソリンエンジンを改造して積むことで、軽量化と省スペース化を実現します。
その重さはわずか8tしかなく、C-130「ハーキュリーズ」に2両格納して運べるほか、大型ヘリコプターでも吊り下げて空輸可能。それでありながら、76mmカノン砲を搭載し、HESHという特殊な砲弾を使えばソ連製のT-55戦車でも撃破が可能でした。
しかし「シェリダン」同様、装甲に関しては重機関銃の弾丸や砲弾の破片から身を守る程度のもので、さすがに戦車の相手は無理だと判明します。しかし、主にその足の速さを活かした偵察車両として、イギリスほか複数の国で運用されることになりました。
同車両は重量を軽くした影響でかなりのスピードが出るようになっており、最高速度はタイヤをはいた装輪戦車並みの最高速度82.2km/hといわれています。これはギネス世界記録としても認定されており、2024年現在でも「世界最速の量産戦車」となっています。
なお、冷戦時代には、いわゆる西側陣営だけではなく、東側陣営のリーダーであったソビエト連邦でも空挺降下可能な装甲車としてBMD-1を1968年に配備します。その後、実戦でのデータも得つつ1980年代にBMD-2、1990年代にBMD-3と続きますが、冷戦終結後、全面戦争での大規模な空挺作戦の起こる確率はほぼなくなり、戦車は空中投下より、戦地近くの基地に直接空輸した方がよいという結論になりました。
その後、空挺部隊車両としては装甲車が残ったのみで、ソ連の軍事技術を引き継いだロシアでも、空挺戦車の開発はストップしています。
【了】
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
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