潜水艦のシンボル“長~い潜望鏡”が消滅!? どう索敵するのか 海自の新鋭「たいげい」で世紀の大転換?
潜水艦の象徴でもある潜望鏡が、その姿を変えています。艦を貫く大きな長い筒が、海上自衛隊の新鋭艦「たいげい」では見られないのです。非貫通式と呼ばれるタイプへアップデートしたためですが、具体的にどういうことでしょうか。
潜望鏡の仕組み
「潜望鏡上げ!」
潜水艦といえば潜望鏡です。潜水艦内の発令所には大きな筒が上下に貫通しており、艦長が取り付いてクルクル回しながら覗いているシーンは映画などでもお馴染みです。しかし海上自衛隊の潜水艦「たいげい」の発令所はちょっと違います。部屋の真ん中にあるはずの大きな筒が無いのです。
とはいえ潜望鏡が無いわけではありません。「たいげい」は2022年3月に就役し、2024年3月8日に試験潜水艦に種別変更となった最新艦で、非貫通式と呼ばれる潜望鏡だけを装備した最初の潜水艦なのです。
潜水艦は窓が無く、操縦席からも外が見えない珍しい乗りものです。窓があったとしても海中は真っ暗で何も見えません。潜航中は海図と慣性航法装置で自艦の位置を把握するほか、音波の反射を利用して航行する海底追随航法を用います。
戦闘ではソナーで目標を発見しても、本当に敵なのかを確認する視覚情報が重要です。その視覚を提供する唯一の手段が潜望鏡なのです。
振り返ると、潜望鏡は1888年9月に進水したフランスの潜水艦「ジムノート」に初めて装備されました。しかし船郭を貫く潜望鏡は防水が難しく、浸水が多くてほとんど使い物になりませんでした。
潜望鏡はプリズムとレンズを組み合わせ、対物レンズへの入射光を屈折・反射させて接眼レンズへ届ける光学式が長く使われています。長いほど深い深度で使えますが、構造的に筒状で折り曲げられません。曲げられない長い筒を船体に収納するには縦の嵩が必要になり、設置場所は限定されます。発令所の場所も潜望鏡によって決まることになります。つまり、潜望鏡が潜水艦設計の制約条件のひとつになっていました。
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