潜水艦のシンボル“長~い潜望鏡”が消滅!? どう索敵するのか 海自の新鋭「たいげい」で世紀の大転換?

海自は時代遅れだったのか?

 このように非貫通式は良いこと尽くめですが、海自の潜水艦のほとんどは光学式潜望鏡を2本装備していました。2005(平成17)年から建造が始まったそうりゅう型になって初めて、うち1本が非貫通式になりました。

 2本とも非貫通式になったのはたいげい型が最初ですが、必ずしも新しい技術を取り入れるのが遅かったわけではありません。潜水艦は信頼性、安全性が最優先で、長い実績があり品質が安定している光学式と、使い勝手は良いものの実績の浅い非貫通式の両者を慎重に比較検証する必要があったのです。

「たいげい」は「デジタル化潜水艦」ともいわれます。様々なタスクはアプリケーションで処理されており、アップデートが容易になっています。また発令所に並んだコントロールパネルは操舵と機関系以外はマルチディスプレイ化(UID)され、どのコントロールパネルでも任意の作業(ソナー、航法、兵装制御など)が行える汎用性があります。従来の潜水艦は外の様子や自艦の状態を把握できるのは発令所のみだったのですが、「たいげい」では艦内各所にディスプレイやプラグイン端末が設置され、乗員間で情報共有がしやすくなっています。

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潜望鏡は初期の潜水艦から必須装備。1919年、アメリカ海軍の潜望鏡訓練の様子(画像:アメリカ海軍)。

「潜望鏡上げ!」という号令を掛け、潜望鏡を覗いて外の様子を見られるのは、基本的に潜水艦艦内でも艦長以下の一部の幹部だけであり、全ての状況を把握しているという矜持と責任があります。その象徴のひとつが姿を変えたというのは、1世紀以上に渡る潜水艦の歴史でも実は大きなことなのかもしれません。

【了】

【写真】筒ないぞ!? 「たいげい」の発令所はいずこに?

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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