潜水艦のシンボル“長~い潜望鏡”が消滅!? どう索敵するのか 海自の新鋭「たいげい」で世紀の大転換?

「たいげい」採用の非貫通式とは

 また、外殻からセイル下の内郭にある指令室まで貫通する筒なので、「ジムノート」みたいにならないよう水圧に耐える防水技術が必要です。潜水艦の品質指標のひとつに潜望鏡の筒から漏れ伝ってくる浸水量があり、ある映画では日本海軍の潜水艦に便乗したドイツ海軍将校が潜望鏡の水漏れの多さに愚痴を言うというシーンが描かれています。実際ドイツ潜水艦は日本潜水艦より漏水量は少なかったようです。

 潜望鏡は潜航中の潜水艦が海上の視界を得る手段ですが、逆にいえば海面に突き出た潜望鏡は、潜水艦が見つかる被探知リスクにもなります。潜望鏡を出している時間は短いほど良いのです。そのため上下させる時間を短縮し、肉眼で限られた視野しかない潜望鏡をグルグル回して捜索し、目標を素早く発見、識別してさっと潜望鏡を引っ込められるような練度も必要になります。

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2022年の国際観艦式で海面上から見た潜望鏡の様子。目立つので出す時間は最小限にしたい(月刊PANZER編集部撮影)。

 光学式潜望鏡のこうした扱いにくさを解決したのが非貫通式潜望鏡です。デジタルカメラからの映像を電子的に伝送してディスプレイに映し出す仕組みなので、非貫通式という呼称のとおり船郭を貫通する長い筒は必要ありません。配線で自由に接続できるためセイルの縦の嵩も必要なく、発令所の位置も潜望鏡に制約されないので、設計の自由度が増します。

 また被探知のリスクも軽減できます。光学式の大きな筒を何重もの防水パッキンの中で動かすより、小さなカメラ付きの棒を上下させる方が作動時間は短くできます。また覗いている1人だけの目ではなく、各ディスプレイの映像を共有することにより複数の目で同時確認ができ、見落としも防げます。もちろん録画も可能です。

 ほかにも光学式では夜間、目を慣らすため発令所内の照明は減光しなければなりませんでしたが、非貫通式では不要になりました。

【写真】筒ないぞ!? 「たいげい」の発令所はいずこに?

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