空母は「厚いほどスゴイ」? 時代のあだ花「装甲空母」いろいろムリがあったワケ
重い腰を上げたアメリカ
なお、「大鳳」では厚さ50mmながら、飛行甲板上のエレベーターに初めて装甲を施し張っています。重くなり昇降速度が落ちることが装甲化の欠点ですが、「大鳳」では問題なかったようです。
日本はさらに大和型戦艦3番艦「信濃」を装甲空母とします。「信濃」は1段格納庫ながら、格納庫面積は4860平方メートルもあり、搭載機数は50機ともいわれますが、露天駐機をすれば最大86機搭載できたようです。飛行甲板装甲は「大鳳」と同じ75+20mmですが、装甲範囲が210m×30mと拡大しています。
一方、アメリカは装甲空母の研究を進めますが、イラストリアス級並みの76mm装甲を施しても454kg徹甲爆弾で貫通されると見て、乗り気ではありませんでした。実際、「イラストリアス」はドイツ軍の急降下爆撃機が投下した500kg徹甲爆弾で、飛行甲板装甲を貫通されています。ただ、日本の特攻機命中には耐えました。
それでも1942(昭和17)年、大統領の要求で装甲空母が建造されることになります。これが1945(昭和20)年に就役した「ミッドウェー」級です。基準排水量4万5000t、搭載機数142機、飛行甲板装甲は1枚板の89mm装甲で、ほかの装甲を合わせると戦艦並みの水平防御を備えていました。
本格的に飛行甲板装甲を備えた最後の空母は、1951(昭和26)年に就役したイギリス海軍の「オーディシャス」級です。基準排水量4万3060t、搭載機60機、102mmの飛行甲板装甲を備えた、当時のイギリスで最強の空母でした。
その後、「フォレスタル」級の飛行甲板に38.1mmの軽装甲が施されるなどの例もありますが、現代では装甲で被害を防ごうという考え方自体が過去のものとなっています。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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