世界唯一の乗りもの「スカイレール」ついに廃止 “合理的な交通手段”のはずが普及せず 強みは弱みにも

急斜面と大カーブの両方に対応

 文字どおり、新時代の交通システムとして生まれたスカイレール。それでは、なぜこの「スカイレールタウンみどり坂」に採用されたのか、それはこのニュータウンの立地状況、すなわち傾斜地を造成して街が造られたのに大きく関係しています。
 
 スカイレールはロープウェイと同様に勾配で力を発揮します。この路線でも、みどり口駅を出発してすぐに263パーミル(1000m進むと263m登る勾配)を駆け上がりますが、これはケーブルカー以外の鉄軌道では日本一の急勾配。たった1.3kmの路線全体で180mもの高低差があります。

 また、駅から北に延びた軌道は、そこから東西方向に長い住宅街を縦貫するように大きくカーブしますが、スカイレールは半径30mの曲線まで対応しています。傾斜に強いケーブルカーなども、このようなカーブのある線形にはできません。高低差とカーブ、ふたつの要素をカバーできる公共交通機関として、スカイレールはまさに最適だったといえるでしょう。

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住宅団地「スカイレールタウンみどり坂」の中を行くスカイレール(2023年11月、柘植優介撮影)。

 加えて、もうひとつの強みが、運転士がいらないという点です。車両の管理は地上設備で行われているほか、駅なども監視カメラなどでシステム管理されており、人件費を最小限に抑えることができました。

 建設費も、モノレールと比べて3分の1以下(1kmあたり20~30億円)で済むため、前出の無人運転と併せてランニングコストを抑制できる点も強みでした。

 ただ、このような特殊な構造ゆえに、他所で採用されなかったのも事実。車両の定員が少ないため、大量輸送には向かず、急勾配に強いというメリットも山間部だからこそ有用で、平地であれば必要ありません。

 開発元の三菱重工業と神戸製鋼所は各所へ売り込みを図り、福岡市や滋賀県大津市、神奈川県の相模原市などで導入が検討されたものの、採用には至りませんでした。

【ドコ走っていた?】スカイレールの位置&車内の様子も

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