だから「シエンタ&フリードだけ」になった あんなにたくさんあったライバル車が消えた理由

「3つの共通点」と、キャラの違い

 そんな「フリード」と「シエンタ」の共通点は、「スライドドア」「背が高い」「全長4.3m(Cセグメント)」であるという点です。逆に言えば、これがコンパクトミニバンの最適解だったのではないでしょうか。

 まず、「スライドドア」は、やはり子育てユーザーにとって嬉しい機能です。外出先の狭い駐車場で、子供が後席ドアを開けても、隣のクルマにドアパンチ攻撃をすることはありません。かつて初代「シエンタ」の後継として2008年に「パッソセッテ」が5ドアで登場したのですが、さっぱり売れなくて、急遽スライドドアの「シエンタ」が復活したということもありました。

 次の「背が高い」というのも重要です。背の高いトールワゴンやスーパートールが主流となった軽自動車を卒業した人には、広い室内の「背の高い」クルマが受けるのは当然のことでしょう。

 2000年代に大ヒットした背の低いミニバンであった「ストリーム」と「ウィッシュ」は、どちらも2010年代にフェードアウトしてしまいました。また、ちょっと大きめの「ラフェスタ」や「プレマシー」も自然消滅しています。サイズ的に中途半端だったのかもしれません。

結局のところ「スライドドア」で「背が高く」、「全長4.3m(Cセグ)」の「フリード」と「シエンタ」が残ったのは、ユーザーの取捨選択の結果であり、コンパクトミニバンを求める子育てファミリーにとって最適のクルマであったことの証明になるのでしょう。そして、淘汰の末の寡占、いわゆる残存者利益を「フリード」と「シエンタ」の2台が享受しているということになります。

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現行シエンタ。スクエアなシルエットの随所に丸みを強調したエクステリア(画像:トヨタ)。

 また、個人的には2台のデザインのキャラが異なっているのも、よい効果を生んでいるように思えます。ポップでかわいい「シエンタ」と、クールで格好いい「フリード」は、住み分けもばっちり。そして2台が存在することで、話題が生まれて、注目度も高まります。まさに「好敵手」という存在になるわけです。

 とはいえ、販売合戦の最中にあるホンダとトヨタの人たちは「好敵手」と聞いても、苦笑いしかないかもしれませんね。

【了】

【生きてたのか!】これが「驚異的に売れなかったコンパクトミニバン」と、“今の姿”です(画像)

Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。

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