「5ナンバー車」もはや中途半端? 規格を守る意義 “ちょっと幅出ちゃって3ナンバー”と、実際違いあるか

「シエンタ」5ナンバーを守る

 その一方で、頑張って5ナンバー枠を守るクルマも存在します。「フリード」のライバルで3列シートのミニバンであるトヨタ「シエンタ」は車幅1700mm以下を守っています。

 スズキの新型「スイフト」も、グローバルモデルですが5ナンバー。「カローラ」もほとんどのグレードで3ナンバー化しましたが、旧モデルである5ナンバーの「カローラアクシオ/フィールダー」の併売を続けています。ちょっと前までのタクシーの代表格であった「クラウンコンフォート(クラウンセダン)」は、高級車「クラウン」の看板こそ背負っていますが、そのサイズは5ナンバーでした。

 そうした5ナンバーを守る動きは、やはり「大きくなると不便」という原則が理由になっていると言えるでしょう。クルマの進化の早さに、道や駐車場というインフラの進化が追い付いていないのです。すれ違いに苦労する狭い道や、5ナンバーじゃないと辛い、狭い駐車場は、昔と変わらず存在します。

 5ナンバーに慣れた感覚で、3ナンバーを運転すると、狭い場所で気を使うことがままあります。やはり、どんな理屈を並べても、「小さいクルマの方が扱いは楽」という原則をくつがえすことはできません。

 そういう意味で、主として幅において3ナンバー化する動きも、際限なく大きくなっているのではなく、5ナンバー超えてちょっとというところで拡大は停止しているようです。「クルマは大きくしたい。でも、大きすぎると不便」という葛藤の末に、1700mmを少し超えたところでウロウロしているわけです。

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スズキのスイフトは新型も5ナンバーだが、スイフトスポーツは3ナンバーだ(画像:スズキ)。

 それであれば、もうちょっと頑張って5ナンバー内に収めることも可能でしょう。しかし、クルマは今やグローバル製品です。3ナンバーや5ナンバーというルールは日本独自のもの。改めて見直してみれば、5ナンバー枠にこだわるのは日本市場向けの製品が中心です。

 そうなると、まさに登録車の5ナンバーはガラパゴスの象徴になってしまいます。他方、より小さいクルマを求めるならば、日本独自の軽自動車があり、今や新車の4割を占めている状況です。誰か偉い人が「クルマの5ナンバー枠はいらない」と強く言えば、意外とあっさり5ナンバーは消えていくのかもしれませんね。

【了】

【え、これだけ!?】ホントに少なくなった現行5ナンバー車種(全写真)

Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。

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