鉄道ファン驚愕「“西武王国”にJR車がくる!?」でもそんな珍しくない? 打ち破った“譲渡車のセオリー”
西武の中古車ばかりが走る三岐鉄道に、JR東海の電車が譲渡。この組み合わせが鉄道ファンを驚かせましたが、歴史的にみるとJR車両の私鉄への譲渡は珍しくありません。それでも驚きが走ったのは、車両譲渡の“セオリー”があるからです。
「えー!三岐にJRおる!!」SNSで“騒ぎ”に
2024年3月、三岐鉄道の構内にJR東海の211系近郊形電車が回送され、SNSでは「三岐に211系が譲渡されるのでは?」と、SNSでちょっとした騒ぎになりました。4月には、一部報道で譲渡の話が公になりました。
三重県を走る地方私鉄の三岐鉄道は、メイン路線である三岐線(さんぎせん)と、近鉄から引き継いだ北勢線(ほくせいせん)の2路線を擁しています。うち三岐線はセメントを主とする貨物輸送が今なお活発に行われていることでも知られていますが、旅客用電車については、全車西武鉄道から譲渡された電車で統一されています。
2024年5月現在、三岐線の電車は2両編成3本(6両)、3両編成5本(15両)の合計21両が在籍しています。一部の編成は、西武時代の赤電塗装やレモンイエロー塗装に復元されており、ファンから熱い視線を受けています。
地方私鉄では、新しく車両を導入する場合でも、資金面などから車両の新製が難しい場合があり、大手私鉄などで活躍していた車両を譲り受けて使用することは珍しくありません。それは機関車、ディーゼルカー、電車、客車、さらには貨車に至るまで行われてきました。中には大井川鐵道大井川本線や銚子電鉄のように、さまざまな鉄道会社からやってきた電車が一堂に会する「動く鉄道博物館」のような路線も見られます。
三岐鉄道の親会社は太平洋セメントのため、大手私鉄の系列企業ではありませんが、1970年代後半から長らく元西武の電車を使い続け、電車の更新も西武からの譲渡車両を充ててきたため、「三岐線の電車は西武」というイメージが強いのは確か。そのため、通常で考えるなら、現有車両も元西武車で置き換えるのが当然の流れと言えます。
その三岐鉄道の車両入れ替えに、他社、しかも予想もしないJRの電車がやってくるのですから、鉄道ファンがざわめいたのも無理はないことでした。211系と現有の元西武の車両は20m級車体・3扉・レール幅1067mm・架線電圧1500Vと同じ条件が揃っているため問題はありませんが、211系が三岐線にやってくるとは、想像すらしなかった人は多いのではないでしょうか。
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