運転席の真横が特等席! 超レトロ「シュガートレイン」奇跡の復活 なんと日本製ディーゼルカー!

台湾の製糖鉄道はほとんどが廃止されましたが、観光鉄道として復活した箇所もあります。台南市新營にあった新營糖廠もその一例で、日立製ディーゼルカー「勝利號」が復活し運行されています。2024年3月に現地を訪れ、乗車体験しました。

この記事の目次

・「勝利號」は日立製作所製の両運転台ディーゼルカー
・派手な車内 運転台の隣には“特等席”が
・中国語のガイドも「ヒタチ」「リーベン」は聞き取れた
・朝イチで乗って正解だった
・右側通行に注意して、沿線で撮り鉄

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前編を読む

「勝利號」は日立製作所製の両運転台ディーゼルカー

 嘉儀から電車で約30分の台南市新營区。台鉄縦貫線の新營站(シンインジャン、站は駅の意)から約1km離れた場所にある新營鐡道文化圏区は、製糖工場「新營糖廠」の構内と計量所の跡地を活用し、製糖鉄道の歴史を紹介する施設です。

 製糖鉄道は街や耕作地を結び、いくつも路線が延びていました。そのうち學甲線と大内線の一部を活用し、新營鐡道文化圏区内に設けた中興站(チョンシンジャン)から八翁(バーウォン)という酪農地域まで、2003(平成15)年から観光鉄道が走り始めました。いったんは2020年に運休したものの、今度は新營站と中興站を結ぶ廃線を活用して、観光鉄道が復活。ディーゼル機関車牽引の列車が走り始めました。

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538番「勝利號」は1954年にガソリンからディーゼル機関へ変更する改造を施された。前面のフォルムがどこか日本の電車を連想させる。長らく烏樹林に保存され、新營へ移送してレストアされた。古風なイコライザー台車を履く(2024年3月、吉永陽一撮影)。

 そして2023年6月、この観光鉄道の目玉となる列車が登場しました。1949(昭和24)年日立製作所製の両運転台ディーゼルカー、台湾糖業(台糖)538番です。車体側面に愛称である「勝利號」の毛筆書体のエンブレムが輝きます。台湾の車両には愛称が冠されることがあり、ナローゲージの旅客ディーゼルカーも、「平等號」「勝利號」「成功號」と愛称がありました。

 製糖鉄道には貨物列車のほか、街を結ぶために旅客列車も走り、日本統治時代から蒸気機関車牽引の客車列車や木製ガソリンカーが走っていました。戦後は旅客列車も更新され、台湾メーカー製のディーゼルカーだけでなく、日立製作所が製造した車両も輸入され、各地の製糖鉄道でカスタマイズされて活躍しました。

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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