ブルーインパルスの末路か? スイス曲技飛行チーム存続に黄信号「ショーに税金を使う」批判への答えは

航空自衛隊の「ブルーインパルス」が使用するT-4練習機は、旧式になりつつあるため後継機が必要になっています。同様に、チームの維持や後継機を選定問題に直面しているのがスイス。同国の動きは日本の参考になるかもしれません。

アクロチームの役割とは?

 F-5が退役した後、「パトルイユ・スイス」はどのような機体で飛行を続けるのか、現在のところ未定です。しかし、スイス軍にはF-5を2028年以降も訓練補助を目的に維持する計画が存在します。

 この計画のメリットは、高性能ゆえに高コストなF-35やF/A-18の飛行時間を減らすところにありますが、それを実現するためにはF-5の射出座席やアビオニクスを改修する必要があり、そのためには900万スイスフラン(約15億円)の投資が必要です。さらに、運用費として年間4000万スイスフラン(約68億円)が必要になります。

 加えてこの計画案は、スイスの納税者が、退役予定の純軍事的価値のない戦闘機を、アクロバットチームを維持する目的で毎年数十億円の税金を投じることに理解を示した場合にのみ可能です。実際に「軍を近代化するために予算を増やしたいと考えているのに、パレードのために数千万スイスフランを費やすのか」という批判的な意見も存在するとか。

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スイス空軍のアクロバット飛行チーム(画像:スイス軍)。

「パトルイユ・スイス」がなくなったとしても、スイス空軍には「PC-7 チーム」という別のアクロバットチームがあります。このチームは、スイス国産のプロペラ機PC-7練習機を使用し、訓練部隊の機体を活用しています。こちらも常設のチームではなく、現役F/A-18パイロットがシーズン初めの2週間とエアショーの前日に集まり、トレーニングを行うというパートタイムの運営です。

 なお、このPC-7 チームが「パトルイユ・スイス」の役割を引き継ぐ案は、追加予算がほとんど不要であることから、実現可能性が高いと言えるでしょう。

 最終的な選択はスイス国民の意思に委ねられていますが、「ブルーインパルス」を保有する日本にとっても、他人事ではない問題ではないでしょうか。

 アクロバットチームは多くの国で、国民の防衛や軍隊(自衛隊)への理解を深め、若者の志願者を増やし、外国との友好を築き、国産航空機(例えばPC-7)の輸出を促進するという重要な役割を担っています。

 ただ、それと同時に防衛費の適切な使い道について、議論を呼び起こすことにもつながっていることから、ブルーインパルスの後継機選定も、数百億円規模の計画となる可能性がある以上、その意義について再考されることは避けられないと筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は考えます。

【了】

【6機だと迫力マシマシ!】アルプスを飛ぶ「パトルイユ・スイス」その妙技を見る(写真)

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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