ドカンと一発!「夢の巨砲」←それ、要りますか? 戦車の巨砲化にNOの声が聞こえるもっともな理由

「巨砲ではなく弾数をくれ!」

 140mm砲弾は30~35kgとされ、人力で扱うには無理があり自動装填装置は必須となりそうです。また砲弾が大きくなることで収納弾数は減少します。120mm砲で自動装填装置を採用しているルクレールの例では、装弾数(=即応弾)は22発ですが、140mm砲弾では17発になります。この数で充分なのかは意見が分かれるところですが、古いデータとはいえ1991(平成3)年の湾岸戦争における対機甲戦闘1会戦の発射弾数は15~20発となっています。

 ところが、そもそも140mmへ巨砲化するという意味が疑問視され始めています。相手がいなくなったからです。ライバルとされたT-14はショッキングなデビューをしたもののパレードに登場したのみで、その後は消息不明。2022年にはT-14を含む「国家兵器開発プログラム(SAP)」の事実上の中止をプーチン大統領が指示しました。

 ロシア軍の主力となっているT-72~T-90には、従来の120mm砲で対応できます。ましてやウクライナでは第2世代のT-55やT-62までが前線に出ている状態です。

 一方ウクライナ戦車兵からは、「M1で敵が潜む建物を破砕しようとしても、120mm多目的榴弾(HEAT)では全く力不足。威力のある榴弾がたくさん欲しい」という声が出ています。ウクライナ戦争では、期待された西側供与戦車の働きは目立っていません。逆に対機甲戦仕様のため歩兵支援に使いにくいと指摘されています。

 徹甲弾は対歩兵戦では効果がありませんし、120mm多目的榴弾は榴弾としては105mm程度の威力しかないとされます。ウクライナ戦争で要求されているのは巨砲化ではなく、弾数と弾種の多さです。

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西側戦車業界に一石を投じたロシアの最新型戦車T-14。事実上開発は中止された(画像:Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons)。

 次世代戦車とされるレオパルト2A-RCやMGCSが主砲をモジュラー化して120~140mm砲の選択肢を用意していること自体、やはり140mm砲は不要なのではという予感があります。巨砲化はこの辺りが限界なのかもしれません。

【了】

【写真】巨大主砲「アスカロン」をぶっ放す!

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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