「ほら撃ってこい」と挑発する仕事!? 米空軍の“最も命知らず”な戦闘機部隊とは? そんな任務「冗談じゃねえ!」が合言葉

2機一組で獲物を狩る

 F-16を装備したワイルドウィーゼルの一般的な任務を見てみましょう。

 彼らは2機1チームとして行動します。1機が敵のレーダー誘導地対空ミサイルの追跡・誘導レーダーの探知と特定を任務とする「ハンター」、もう1機が地対空ミサイルのレーダー関連施設やミサイル発射台の破壊を任務とする「キラー」です。彼らは、ハンター・キラーチームと呼ばれます。

 彼ら2機は通常の攻撃部隊より先に基地から発進し、敵レーダーに探知されないように低空飛行しながら敵防空網に接近、そのまま低空飛行で様子をうかがいます。タイミングを見てハンターが急上昇し、敵の地対空誘導ミサイルの追跡レーダーが照射された段階で、その位置を測定して低空飛行に戻ります。

 こうしてモニタリングされたデータをもとに、敵地対空ミサイルのある場所を特定し、キラーが関連施設やミサイル発射台を空対地ミサイルなどで破壊する――この一連の行動を何度か繰り返します。

 ワイルドウィーゼル搭乗員の非公式の合言葉に「YGBSM(You Gotta Be Shittin' Me)」というものがあります。これは直訳すると 「あなたは私を騙そうとしているに違いない」となりますが、かなり砕けた言い方で、「冗談じゃねぇよ」「信じられねぇ」「嘘だろう!?」などといった方が正しいニュアンスです。

 これは最初にワイルドウィーゼルの搭乗員となったパイロットたちが、その任務の概要を知った時に発したとされる言葉だそうで、百戦錬磨の彼らにとっても、どれだけその任務が突拍子もないものだったかがうかがえます。

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三沢基地のF-16ワイルドウィーゼル機(画像:アメリカ空軍)。

 現在日本の三沢基地に駐留するアメリカ空軍第35戦闘航空団にもワイルドウィーゼル部隊がおり、垂直尾翼のテールコードにはワイルドウィーゼルの頭文字である「WW」が描かれています。

【了】

【あ、尾翼にイタチが!】50周年記念カラーになったワイルドウィーゼル機(写真)

Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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