「トップガン」クルーもこれで学んだ? 戦わない空母搭載機 愛称「ヒトデ」はダジャレ的!?

「トップガン」育成にも貢献した名機

 さらに、空母への発着艦時などにおける後席の前方視界を改善する目的で、後部座席が約15cm高くされたため、キャノピーも後部が持ち上がったデザインになっている点も外観上の識別点といえるでしょう。

 エンジンもT2Vは同じアリソン J33ジェット・エンジンながらやや推力が大きい別型式のものを搭載したため、それに合わせて空気取入口の形状が変更されています。

 ほかにも、発艦を有利にする目的で仰角を稼ぐため、前脚柱を伸ばすことができるようにされました。また細かい点では、一部の計器類が海軍式のものに換装されたり、不時着水時用の緊急キットを搭載したりなど、空母での運用に必須の機能や装備が盛り込まれています。一方で、ほとんどの空母搭載機が備える主翼の折畳み機構はありません。

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空母「アンティータム」の艦上に駐機する2機のT2V(画像:アメリカ海軍)。

 T2V「シースター」は1954年から生産が始まり、1958年に生産を終えるまでの間に150機が生産されました。そして1962年のアメリカ3軍航空機呼称統一によって、改めてT-1Aの型番が付与されています。

 あくまでも練習機なので華々しい戦歴こそないT2Vシースター。しかし運用が開始された1957年から退役した1970年代までの間に、数多くの「海のパイロット」たちを一人前に育てた「名機」であることは確かです。そのなかには、同機で初めて大空へと羽ばたいたのち、エリートパイロットの登竜門的存在である「海軍戦闘機兵器学校」(当時)、いわゆる「トップガン」に進んだ者たちもいることでしょう。

 そう考えると、まさに戦後のアメリカ空母機動部隊を支え続けた「縁の下の力持ち」的存在の艦載機だといえるのかもしれません。

【了】

【日本でも使っていました】懐かしい! 日の丸描いた「シューティングスター」ほか(写真)

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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