自国より“強い”戦闘機を輸出して大丈夫なの!? ただし高性能すぎてもダメ 同一機種なら強いのはドッチか

兵器の世界には「モンキーモデル」と呼ばれる、自国軍向けよりも性能の劣る外国専用モデルというものがあります。ただ、戦闘機においては、いまやそういうものはないとか。廉価版を作るメリットとデメリットとは何でしょうか。

アメリカ軍仕様より高性能な外国向け戦闘機がある

 戦闘機は国家の防衛力にとって不可欠な存在であり、その性能は国家安全保障の根幹を支える要素です。しかし、戦闘機を自国で生産できる国はアメリカ、ロシア、西欧諸国、中国、スウェーデン、韓国などに限られており、多くの国は輸入(ライセンス生産含む)に頼らざるを得ないのが現状です。

 そこで疑問が生じます。仮に同一機種であっても、自国軍向けと輸出用(他国向け)で性能差は存在するのでしょうか。

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2023年5月、茨城県の航空自衛隊百里基地で訓練を行う日印両国の戦闘機。奥がインド空軍のS-30MKIで、手前が日本のF-2戦闘機(奥)(画像:インド空軍)。

 一般的に、戦闘機は自国空軍向けのほうが強く、輸出向けの機体は機能制限を設けていると思われるかもしれません。確かにそうした事例はあります。代表的なものでは、2024年現在、航空自衛隊の主力戦闘機であるF-15J「イーグル」が挙げられるでしょう。同機は、採用後に開発元のアメリカから自己防御用の搭載電子機器(アビオニクス)に関して輸出制限をかけられた結果、同等の装備品を日本は独力で開発する必要に迫られました。

 しかし、近年ではこうした事例は少なくなっているようです。たとえばカタール空軍への輸出仕様であるF-15QAは、2020年の初飛行時点において最も高性能なF-15であり、本国アメリカ空軍仕様を上回るアビオニクスが搭載されていました。

 また、後にF-15QAをベースにしたアメリカ空軍仕様F-15EX「イーグルII」が開発・導入されているほか、航空自衛隊のF-15Jも「イーグルII」相当のアビオニクスにアップグレードされ、ほぼ対等の能力が得られる見込みです。

 一方、F-16に目を転じると、こちらは輸出仕様、すなわち外国向けの方が優れています。というのもアメリカ空軍の主力となるF-16はブロック50/52とよばれる仕様であり、比較的古いタイプです。現在新しく生産されているものはF-16Vブロック70/72とよばれる仕様で、これらはF-35の開発で培われた新しいアビオニクスを搭載し、ブロック50/52よりも高い性能を特徴としています。

【写真】これが幻に終わった輸出専用モデル「スーパー・ミラージュ」です

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