「ピーキーすぎる」エース専用機って? 実在した“ほぼワンオフ機”を愛用したパイロットとは

威力は絶大だが普通のパイロットは操作困難

「Ju87 G-2」は37mm砲で戦車や装甲車の装甲が薄くなっている車体上部を狙い、1撃で車両を撃破することを想定して開発されました。

 その威力は絶大で、ぶ厚い装甲で高い防御力を誇ったソ連の重戦車すら一瞬で破壊する性能を誇っていましたが、それは全て上手くいけばという条件付きのものでした。

元々、急降下爆撃機として開発されたJu87「スツーカ」は、大型機関砲を主翼に搭載するには適しているとはいえず、発射時の反動の制御が非常に難かったそうです。

 さらに、1943年7月という登場時期も問題でした。独ソ戦の3年目となるこの時期、ドイツは完全に守勢の状態で、各戦線において制空権の確保が困難になっていました。そのような状況下、大重量の機関砲を両翼にぶら下げればそのぶん低速となり機動性も悪化するため、撃墜されるリスクは格段に高まります。

このように戦場を飛ぶだけでもかなりのリスクがあるうえに、携行弾数も1門で12発、左右合わせて24発しかないため、少しでも弾を無駄にしないよう目標にかなり接近する必要もありました。

 ただ、長年同機に乗り機体の特性を理解しているパイロットには、異常なまでの対地攻撃能力の高さを提供するという非常にピーキーな機体でもありました。ただ、同機を愛したルーデルは、ベテランのスツーカ乗りの中でも最も卓越したパイロットであったことから、困難な要素が山積している機体にも関わらず、凄まじい数のソ連軍車両を撃破しています。ただ、やはり操縦は大変だったようで、彼自身「操縦が恐ろしく難しい」と同機を評した言葉を残しています。

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飛行する「シュトゥルモヴィーク」ことIl-2(画像:パブリックドメイン)。

「Ju87 G-2」が前線に届くと、ほかのベテランスツーカ乗りも同機を操縦し、戦果を挙げ続けました。ただ、敵であるソ連空軍は同じようなコンセプトでありながら新米パイロットでも安定した飛行ができた「シュトゥルモヴィーク」ことIl-2を大量に投入してきます。

同機は確かに創作物のような活躍ぶりを示しています。とはいえ、局地的な優勢を得られたとしても、大局で満足な兵力が確保できなくては、いずれ覆されてしまいます。結局、「戦いは数だよ!」という考えは重要なようです。

【了】

【3倍速いの?】これが、機体が赤く塗られた戦闘機です(写真)

Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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