割引額は「誰にもわからない!」 高速道路の新・深夜割引はまるでガチャ? 適用条件「走った分だけ」「上限あり」さらに「運」

割引の根拠に「平均速度」 それは「運」?

 そこで、新たに採用されるのが「平均速度」という“物差し”です。

 ETC車の移動を追跡するわけにはいかないので、道路に設置されたアンテナ(路側アンテナ)と通信した履歴をたどります。

 路側アンテナは、入口と出口の2つの料金所のほかに、複数の経路などを特定するために、料金所でない場所にも設置されています。

 この通信履歴からわかる利用距離+推計距離で、割引対象となる距離を計算します。割引時間帯をまたぐ推計距離は、割引時間帯の直前直後に設置された2つの路側アンテナ間の距離と、通信履歴にある通過時間の差で「平均時速」を求めて、22時時点は何キロポスト付近、翌5時は何キロポスト付近を走っていたことを特定するわけです。

 このような複雑な計算が必要な理由は、路側アンテナの設置間隔に原因があります。高速道路会社によると、路側アンテナは「約50km間隔」でしか設置されていません。サービスエリアの設置距離が約60kmですから、かなりおおざっぱな間隔です。仮にこの設置間隔が0.5km間隔であれば、路側アンテナの通信履歴でほぼ位置を確定することが可能で、平均速度を使う必要はありません。

 もともと位置情報を取得することを前提としないETCで位置を特定するため、これだけの手間が必要なのです。そのうえで、割引額は後日「ETCマイレージサービス」による還元、または「ETCコーポレートカード」の請求時に反映する方式をとります。

 一方、利用者目線に立つと割引制度に「距離」+「時間」の要素を持ち込むことは、高速道路の料金負担に割り切れない不平等感を生じさせる可能性があります。

 というのも、平均速度は、渋滞や休息の取り方によって大きく変わります。つまり、同じ車種区分で同じ距離を走ったとしても、平均速度によって割引対象距離が変わるのです。国土交通省も「割引額が利用状況によって変わる可能性はある」(高速道路課)と認めています。

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ETCアンテナのイメージ(乗りものニュース編集部撮影)。

 深夜の高速道路は、割引の適用時間を待つ車両などがSA/PAの駐車スペースからあふれ、本線との合流部や高速バスの停留車線などに駐車し問題になっていました。しかし、利用車が把握できないほどの複雑な割引制度で、こうした問題を解決するしか方法はなかったのでしょうか。

 現状では、利用者側から割引額をチェックする術はありません。高速道路会社は実施までに各社のウェブサイト内に割引料金シミュレーションサイトを用意しますが、実用までの改善点は少なくありません。

【了】

【これだ!】新・深夜割引で最大の「ガチャ要素」(画像)

Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 割引の最適解が容易に求められないということは特定の利用方法に集中しないということなので問題解決になっています。また割引の原資である料金収入が特定の利用方法をとる車にだけ使われることもないため平等になると思われます。