自衛隊でも激レア技能! LCACシミュレーターを体験 フネというより回転翼機?

運用なぜアメリカ海軍と共通に?

 まずリフトファンを起動して艇を浮上させます。水しぶきが巻き上がりワイパーがせわしく動きますが、晴天の昼間という設定のためか視界は意外と良好です。しかし操縦席からの視界と体感だけでは、自身の操作と艇の挙動の関係が全く把握できません。操縦桿とフットペタルを上手く調整しないと、目標に向かって艇がなかなか正対してくれないのです。

 進路変更は荒い操作をするとすぐに旋回し過ぎます。ただ、ここで慌てて当て舵すると艇は蛇行やドリフトをしてしまいます。そのような挙動を起こさないためにも、FMTで独特な操縦法を習得し、高い運用能力を確得する必要があるといえるでしょう。

 なお、LCACの操縦は自衛隊全体の中でもかなりレアな技能で、一通り操縦できるようになるまでには約半年を要するそうです。

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輸送艦「おおすみ」から発艦するLCAC。空母に発着艦する艦載機のように、高い操縦技量が必要だ(画像:海上自衛隊)。

 LCACの任務のひとつは水陸両用作戦を支援することです。陸上自衛隊の水陸機動団がアメリカ海兵隊との共同運用を強く意識しているのと同様に、LCACもアメリカとの共通運用が意識されています。乗員の呼称や配置、用語にとどまらず、服装もツナギに航空機用ヘルメットを着用するなど、アメリカ海軍と共通化されています。

 保全事項もアメリカと同じレベルになっています。LCAC自体がアメリカ海軍のものと同一であるため、アメリカ海軍のLCACを海自のおおすみ型輸送艦に収容できるのとともに、海自のLCACをアメリカ海軍のドック型輸送艦に搭載することも可能です。このようなシミュレーターまで備えた教育施設を揃えているのは、LCACが災害時頼りになるというだけでなく、日米の安全保障協力関係を維持する重要なアセットであることを示していると感じました。

【了】

【実物】これがLCAC操縦シミュレーター「FMT」です

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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