空自の戦闘機派遣「ワンチームで行くぞ!」豪州演習で見せた“少数派”こその強み

1000km以上離れていても想いは一緒

 なお、小林1佐によれば、こうした異なる飛行隊でのノウハウの共有は日常的に行われているとのこと。航空自衛隊の戦闘機飛行隊は全国の基地で活動しており、F-2戦闘機も築城基地と百里基地という離れた場所で、異なる航空団の下で日々任務に就いています。

 しかし、飛行隊のパイロットや隊員たちは、1000km以上離れた基地どうしでも日頃からビデオ会議のようなシステムを利用してコミュニケーションや情報交換を行っているらしく、そこにはF-2戦闘機独自のコミュニティーのようなものがあるといえるでしょう。

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ダーウィン基地をタキシングするF-2戦闘機。奥は先に着陸したオーストラリア空軍のEA-18G「グラウラー」(布留川 司撮影)。

 2024年現在、航空自衛隊の主力戦闘機であるF-15J「イーグル」の飛行隊は全国4つの基地に7つの飛行隊がありますが、F-2飛行隊はその半分以下の3つしかなく、パイロットの多くは所属する飛行隊が違っても、これまでの訓練や転勤によってお互いの顔を知っており、小林1佐も「スモールワールド(小さい世界)」とコメントしていました。

 演習期間中、筆者は航空自衛隊のパイロットたちを見かける機会が何度かありましたが、彼らの飛行服には所属する飛行隊を意味するワッペン(パッチ)がついており、それが異なる飛行隊のモノであってもパイロットたちは親しげに会話していました。

 航空自衛隊にとって「ピッチ・ブラック」のような国際演習は、自身の技量や能力を試すだけでなく、他国の空軍との連携やコミュニケーションも図れる貴重な機会といえます。そこで得られた経験は、普段行っている国内の訓練では手に入らないものであることから、参加した隊員はそれを個人としての経験だけに止めず、全体共有することで、航空自衛隊という組織そのものや、ひいては日本の安全保障にも寄与するようにしていると、現場で彼らの動きを取材して実感しました。

【了】

【画像】『エースコンバット』『エリア88』? F-2も入った圧巻の異機種による大編隊

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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