初飛行50周年 ヨーロッパ共同戦闘機「トーネード」万能性を追求したら“見込み客”半減なぜ?
困難を克服して完成した機体の性能は?
1974年8月14日の初飛行後は、高高度での減速中に搭載したRB199エンジンに振動が発生するという重大な安全上の問題が発見されます。この問題を解決するため、超音速旅客機「コンコルド」を開発したイギリスの設計チームが関わるなどし、イギリス側とドイツ側の技師の情報共有の不備もありつつも、1976年には問題はほぼ解決し最初の量産機の製造を開始。完成した量産1号機は1979年7月10日に初飛行しました。
こうしてモノになった「トーネード IDS」は当初計画していた通り、対地攻撃や低空での偵察能力は良好。NATO規格のミサイルや爆弾はほぼ全て搭載でき、低空と高空の双方での運動性も可変翼のお陰で確保されていました。ただ、イギリスは北海や大西洋北東部などの海上で運用するには航続距離に不安があるということで、同機とは別に「トーネード ADV」という制空戦闘専用の機体も独自に開発しています。
量産開始後は開発を担当した3か国のほか、サウジアラビアも同機を購入します、実戦投入は1991年の湾岸戦争が最初で、その後もアフガニスタン戦争や、イスラム国との戦いにも使用されています。直近でも2018年のシリア内戦にイギリス空軍がシリア政府軍を攻撃するのに用いており、2024年現在も運用中です。
揉めに揉めた同機の共同開発で得られた経験と実績はその後、イギリス、ドイツ、イタリア、スペインが共同開発を行ったユーロファイター「タイフーン」で活かされることになります。おそらくイギリス、イタリア、そして日本の3か国で計画中の次期戦闘機開発計画、いわゆるGCAP(Global Combat Air Program)でも、その知見は活かされるのではないでしょうか。
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