宇宙飛行士が旅客機のコックピットになぜ?「操縦訓練にあらず」JAXAとANAが見据える次の一手

JAXA宇宙飛行士の基礎訓練に、ANAの訓練メニューが使われました。同社が保有する施設を用いて行われたトレーニングは、操縦技量というよりも心理的な鍛錬の意味合いが大きいようです。その様子を実際に見てきました。

2種類の訓練の共通点とは?

 JAXAが求めたのはHPB-8訓練ですが、ANAはこれに応えるために自社で行っている訓練の中から、CRM訓練(Crew Resource Management訓練)と英語訓練、異文化適応教育を提供しました。

 どのように対応したのか、それぞれを各要素に分解して比べてみましょう。

 まずHPB-8の求める内容は、以下の8要素に分類されています。

・自己管理

・チームワークと集団行動

・コミュニケーション

・リーダーシップ

・不協和対応

・状況認識

・意思決定と問題解決

・異文化交流

 ANAが提供した訓練のうち中核となるのはCRM訓練で、以下の5要素からなっています。

・コミュニケーション:情報共有、意思疎通、主張

・チームビルディング:リーダーシップ、環境設定

・ワークロードマネジメント:計画、優先順位、配分

・シチュエーショナル・アウェアネス:警戒、状況認識、予測

・ディシジョン・メイキング:意思決定、問題解決、振り返り

 HPB-8とCRM訓練の要素は、目指す資質の分類方法こそ違うものの、困難な状況下において限られた時間とリソースで的確な判断をするために能力を向上させる、という目標が似通っています。例えばHPB-8のチームワークと集団行動は、CRM訓練のチームビルディングやワークロードマネジメントにまたがる内容だと考えられます。

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JAXAの求めるHPB-8と、ANAの提供する訓練の対応(作図:東京とびもの学会)。

 宇宙飛行士向け訓練と航空会社向け訓練の間にこれほど親和性があるのは、CRM訓練の基本的な考えである「安全で効率的な航空機運航を実現するために利用可能な全てのリソースを有効活用する」を宇宙飛行士に必要な内容に置き換えると「安全で効率的な宇宙飛行や滞在、実験を実現するために利用可能な全てのリソースを有効活用する」と、航空機運航を宇宙飛行や滞在、実験にすれば通用してしまうくらいの近さにあると考えられます。

 このことについては、事後会見で米田候補者が「宇宙飛行そのものではないが、限られた時間で情報を集めて判断するという本質は共通している」という趣旨のことを述べており、候補者自身も実感を持って取り組んでいたことがわかります。

【コレ使いました】ANA保有のボーイング777用シミュレーター 内部の様子も(画像)

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