滑走路ない山に着陸!? ドイツ“最狂の指揮官”が最後にすがったヘンテコ機「無理やり成功させたぞ、コイツ」
問題を解決した名機「シュトルヒ」
そこで、救出作戦を任された武装親衛隊のオットー・スコルツェニーが考えたのが、偵察機や連絡機として使われていたFi156「シュトルヒ」と軍用グライダーを使った作戦です。ドイツ軍の降下猟兵は大戦序盤のベルギーでのエバン・エマール要塞での戦いでグライダーを用いた降下作戦を世界で初めて実行して以降、複数の作戦で使用しており、グライダーを使った戦法では巧者で、いかに狭い場所でも正確に降ろす技術を持っていました。
作戦決行の当日、スコルツェニーと降下猟兵は、8機の軍用グライダーを使い、ホテルの目の前へと降下。同地を守っていたイタリア国家憲兵隊(カラビニエリ)は、まさかドイツ側が本気で空から侵入して奪還を行うとは考えておらず、全く抵抗できずにムッソリーニを奪われてしまいます。
しかし奪還後が大きな問題でした。ムッソリーニを守りながら下山すると、地上で敵に包囲される可能性が高まります。そこで活用されたのが、ホテル至近に着陸し待機していたFi156「シュトルヒ」でした。
当初、飛行機の離陸は無理と判断されていましたが、ムッソリーニが軟禁されていたホテルの前には、小さい空き地がありました。そこならば、「シュトルヒ」を降ろしてムッソリーニを空路で護送できるとスコルツェニーは判断したのです。
同機は、卓越した短距離離着陸能力を有しており、着陸時は約20m、離陸する際も50m前後の滑走で進空できました。乗員は4名のためスコルツェニーとムッソリーニを収容すると若干重量オーバー気味でしたが、75m程度の滑走で離陸したと言われています。
さらに、グライダーで降りた降下猟兵に関しても、付近にあったロープウェイを占拠し下山。陸路で撤退します。あまりの手際の良さにここでもカラビニエリはほぼ抵抗らしい抵抗できないまま、ムッソリーニを奪われたうえ、敵の完璧な脱出まで許すことになりました。
【了】
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
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