車体に謎の「木目」なんだったのか… 日本で一世風靡したデザインの元祖は? 衰退には理由があった

アメ車を強く意識した日本製ステーションワゴン

 1980年代以前、日本でのステーションワゴンの認知はまだまだ低く、多くのユーザーはライトバンの違いを理解していませんでした。ステーションワゴンの需要もまだまだ低かったのですが、今よりも国内メーカー間の競争が熾烈だったことから各社はニッチ市場も豊富にラインナップしており、その多くが外装にアメリカの「ウッディ・ワゴン」を模した装飾を施していたのです。こうしたアメリカ車を模したスタイルは、サーフィンやキャンプなどのアウトドアレジャーを楽しむ若者を中心に人気となったようです。

 しかし、バブル期の前後で日本車のトレンドがアメリカからヨーロッパへと変化すると、アメリカ生まれの「ウッディ・ワゴン」は次第に古臭く見られるようになり、1990年代のワゴンブームの頃には「フェイク・ウッド」の装飾がされたステーションワゴンは新車で見ることはなくなりました。

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2005~2010年に生産された「スバルR1」のカスタムカー。往年の「ウッディ・ワゴン」のカスタマイズが施されている。潜在的な需要は衰えていないのかもしれない(山崎 龍撮影)。

 なお、本家のアメリカでは「ウッディ・ワゴン」はもう少し長生きします。1991~1996年に生産されたシボレー「カプリス」やビュイック「ロードマスター」が最後の「ウッディ・ワゴン」となりました。これはその特徴的なスタイルが消費者に飽きられたというよりも、この頃から人気となったピックアップトラックやSUV、ミニバンに押されて、ステーションワゴン市場が衰退したことが原因です。

 そして、2010~2013年に生産されたキャデラック「CTSスポーツワゴン」を最後にアメリカ製ステーションワゴンの新車は消滅し、それによって「ウッディ・ワゴン」もまた姿を消しました。

 とはいえ、「ウッディ・ワゴン」を支持するユーザーは少なからずいるようで、2000年に登場したクライスラー「PTクルーザー」や、2006年のシボレー「HHR」には、ドレスアップパーツとして「フェイク・ウッド」の社外品が販売されて好評を得ていました。

 現在では新車は作られてはいませんが、世界中に根強いファンがおり、旧車となった「ウッディ・ワゴン」が愛好家の手で大切に保存されています。アメリカ車のイベントやクラシックカーショーに出かけたときは、ぜひ歴史と伝統を持つ「ウッディ・ワゴン」に注目してみてください。

【了】

【昭和世代には懐かしい!?】車体の一部だけ木目にした日産「スカイライン」(写真)

Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)

自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、カワサキZX-9R、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか

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