「ドローンはレーザーで撃ちまくれ!」そう簡単じゃない!? “コスパ兵器”時代に日本メーカーが活きる道とは? 【後編】

単純に連接するのではなくて…日米同盟における防衛産業の新たな試み

「統合化されたネットワークを使えば、単独では補えない能力を(味方のシステム同士をつなぎ合わせることで)何倍にも増加することができます」と、洗井事業部長は将来戦におけるネットワークや通信システムの重要性を指摘します。

 そこで重要になるのが、2024年1月17日に三菱電機とアメリカの大手防衛関連企業であるノースロップ・グラマン社が締結した、「統合防空システム分野における装備品のネットワーク化の実現を目的」とする協業契約です。

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洗井昌彦 三菱電機 執行役員 防衛・宇宙事業本部副事業本部長 兼 防衛システム事業部長(画像:三菱電機)。

 ノースロップ・グラマン社は、あらゆる装備品や部隊同士を連接し、リアルタイムで情報を共有することができる次世代の指揮統制システム「統合防空ミサイル防衛戦闘指揮システム(IBCS)」を開発し、すでにアメリカ陸軍において採用されています。そして三菱電機も、陸上自衛隊で運用中の「対空戦闘指揮統制システム(ADCCS:アドックス)」と呼ばれる指揮統制システムを開発した実績があります。

「ADCCSとIBCSはかなり似ているシステムです。そのため、そこをどうコラボレーションさせていくのかというのは、まさに今(ノースロップ・グラマン社と)お話をしている最中です」と、洗井事業部長は説明します。一方でこの協業契約は、ADCCSとIBCSを単純に組み合わせる、あるいはIBCSを陸上自衛隊に導入するというシンプルな話ではないと、洗井事業部長は指摘します。

「日本周辺で有事が起きれば、運用の観点からして、アメリカ軍は必ずIBCSを日本に持ち込んでくることになります。その際、日米は共同で戦うのは当たり前のことです。三菱電機は日本における国産防空システムメーカーであり、アメリカ軍の運用における中核となるIBCSと日本の防空システムがどのように連携していくかということは、日米の共同防空の中では重要なテーマになると考えました。そこで、ノースロップ・グラマン社との協業契約を結んだのです」

 つまり日米が共同で戦うことを前提として、お互いが持つ装備品をいかに連接させるかという点について考えた結果、それぞれの開発元である企業同士で提携を結んだということです。これは、日米同盟の下における防衛産業の新たな歩みのはじまりといえるかもしれません。

【了】

【これがつながるのか…】日米の指揮統制システムはこんなヤツ(画像)

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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