同じJRで「特急」vs「高速バス」なぜ完全競合!? 四国で繰り広げられる“戦い”の理由とは

なぜ、JR四国グループで競合するのか

 19時ちょうどに一宮バスターミナルを1分遅れで出発。3名が下車しました。19時14分に高知駅バスターミナルへ到着し、5名が下車しました。所定では19時8分着で6分遅れですが、それでも2時間34分。JR特急と同等の早さです。

 終点のはりまや橋に到着したのは19時23分。最終的には8分の遅れでした。乗車しての実感ですが、鉄道は山陽新幹線からの乗り換え需要が多く、バスは岡山~高知間単独の都市間輸送を担っているように見えます。これは、岡山駅で新幹線などからバスに乗り換えると、鉄道料金の連続性が途切れるので、それほど割安にならないということがあるのでしょう。

 JR四国へ、同系列のバスと競合する理由を尋ねると、以下のような回答がありました。

「JR四国の発足後、自動車事業部としてバスの一体経営を行っておりましたが、2004(平成16)年4月にジェイアール四国バスを発足させました。鉄道から高速バスなどにご利用を移されるお客様に対しても、JRグループとして引き続きご利用いただく観点から、高速バス路線を拡大してまいりました。なお、公共交通ネットワークの四国モデルにおいては、競合ではなく『協働』という形でご説明しておりますが、現実として、バスは他の会社と一緒に運行しておりますので、一義的には鉄道と競合する構図がベースにあります。現実的なご利用として、主要駅間は競合しておりますが、途中の停留所と鉄道駅では、鉄道とバスで異なっているところもあり、ニーズによって棲み分けができている部分もあります。鉄道のご利用においては、お得な企画きっぷでバスと大きな乖離が出ないような価格設定を行っています」

Large 241001 ryoma 03

拡大画像

19時14分、高知駅バスターミナルに到着(2024年8月、安藤昌季撮影)。

 なお、JR四国の「岡山自由席トク割回数券」は、高知駅を中心として朝倉~土佐山田間から岡山駅までの回数券が4枚で1万4200円なので、片道3550円相当。「岡山指定席トク割きっぷ」は同じ区間の往復きっぷで8000円なので、片道4000円相当です。「岡山週末指定席トク割きっぷ」は週末のみながら、同一区間で往復7380円なので片道は3690円相当。バスにはない小児料金だと3690円なので、片道は1845円相当です。

 高速バスも往復なら同額の7380円なので、子連れの家族だと鉄道の方が安いことになります。家族向けに「アンパンマン列車」を走らせるJR四国の戦略はしたたかに、「棲み分け」を誘導しているのかもしれません。

【了】

【写真】列車と競合「龍馬エクスプレス」の車内

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。